発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
9/2・100万人都市水土里のシンポジウム「命育む北の大地のめぐみ」―農地改革と農地、農業用水等の資源の行方―/2004-09-03
 9月2日、道開発局、全国農村振興技術連盟北海道地方連盟協議会、北海道土地改良事業団連合会の主催によるシンポジウム、100万人都市水土里のシンポジウム「命育む北の大地のめぐみ」―農地改革と農地、農業用水等の資源の行方―が、札幌市内の共済ホールで開催された。
 食料・農業・農村政策審議会から亀井農林水産大臣に対して、8月10日に「中間論点整理」が報告され、農政改革の議論はまもなく後半戦を迎える。
 改革論議のポイントは、農産品の生産効率一辺倒だった農村評価の基準を変え、農地などがもたらす環境的価値を積極的に評価し、維持向上を図ることにあるという。
 東京大大学院農業生命科学研究科の生源寺眞一教授が基調講演に立ち、生命産業としての農業の特徴と、共同作業によってその機能が維持されてきた農村地域資源の特徴について説明し、中間に「宇宙からわかった!北海道の農地、その知られざる多面的役割」と題したVTR上映をはさみ、次に標茶町虹別の酪農家で北海道美しい景観のくにづくりアドバイザーを務める大山裕氏が、虹別地区での地域資源の維持管理の実践例を披瀝した。
 パネルディスカッションでは、フリーキャスターの小日向徳子氏を司会進行、生源寺氏をコメンテーターに据え、パネリストに北大名誉教授の梅田安治農村空間研究所長、JAきたそらちの黄倉良二代表理事組合長、吉田弘志鹿追町長、農林水産省の川村秀三郎農村振興局長、大山氏の5人を迎えて、農村地域資源の行方と維持のアイデアを語りあった。
 農産地域資源の最大の特徴は英国のコモンズや日本の入会地に通じる、共同役務による資源管理による個々の生産基盤確保にあるという。現状のわが国では、都市と農村の関係が分離されており、共同役務が農村地域住民に集中、都市住民はその資源から得られる生産品や周辺効果を享受する一方の存在になっていることが問題と指摘され、一方で農村地域住民の高齢化が進み、共同役務に割くべき労働力が不足しつつある現状が報告された。
 大山氏は、生産者と消費者の分離された関係を修復するためには、グリーンツーリズムやファームインといった新興農村観光事業を活用し、現場に消費者を取り込むべきと訴え、黄倉氏は、農村地域でも、周辺との協議によって全戸で減農薬農業に取り組むなど、新事業への掘り起こしが可能と語った。
 梅田氏は、農業用水・排水路周辺をビオトープ化し、都市住民の労働力を導入するという独自のアイデアを披露。議論はいかにして消費者に農業生産と農業資源が持つ特殊性や多面的機能を認識してもらうかに集中した。
 農政改革の母体となる食料・農業・農村基本法は、WTO時代に即した日本農業の維持存続を考えつつ、現在5年目の見直し時期を迎えている。北海道農業が今後どのような進路をとるべきかは、消費者もその舵の一部を握っている。
写真:パネルディスカッションの様子。左より小日向氏、生源寺氏、梅田氏、黄倉氏、吉田氏、大山氏、川村氏
拝 映輔
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