取材ノートから・ガラス損壊事件から札幌駅前の自転車事情を考える/2004-09-04 |
8月18日未明、札幌駅南口広場のガラスが割られるという事件があった。 場所は大丸百貨店にほど近い西口近辺。午前3時頃、ステラプレイスを巡回中の警備員が、玄関扉が外れているのを不審に思い、周辺を調査したときに発見されたという。 警備員は、「酔客が玄関口から侵入しようとし、施錠されているのに腹を立てて、傍のガラスを割ったのではないか」さらに、「ガラスを割る時、付近にあった放置自転車を投げつけて割ったのではないか」と、推測している。 深夜の駅ビルで、通路を通ろうとして施錠されていることは良くある話だ。だが、それに腹を立ててガラスを割れば器物損壊ということになる。 しかも、放置自転車を使ったのではないか、という部分にこの事件のポイントがある。言ってみれば、放置自転車がなければ起きなかったかも知れないのだ。 札幌駅南口広場は、市によって自転車の乗り入れを禁じられている。あるのは周辺道路に臨時設置された駐輪場だ。しかし、周囲の自転車置き場は駅から遠く、便利であるとはとても言えない状態だ。 現在、札幌駅周辺にある駐輪場は、計11ヶ所・約2900台分。これは、道立劇場予定地である北5西1地区の暫定駐輪場、歩道上の臨時駐輪場も含めた数字だ。2005年4月には、複合商業ビルが開業する北5西5地区に、約600台を収容する立体駐輪場が整備され、総収容台数は約3500台になる。 一方、現在札幌駅周辺に流入している自転車は、計約6000台。03年3月に南口再開発が完成してから約1500台増と急増した。自転車利用者は主に、札幌駅周辺の商業施設利用者か通勤客、あるいは施設従業員ではないか、と推測されている。 ヨドバシカメラ札幌店が進出する以前の1995年当時、札幌駅周辺への自転車流入量は約1500台だった。98年に完成した北口立体駐輪場も、当時の利用状況はガラガラだったという。その後、札幌駅周辺には大型商業施設が加速度的に集積、ビックカメラが営業を開始した2002年当時で約4500台になった。 札幌市による駐輪場対策はこの当時の数値を基礎に作成されており、急増する自転車に対応し切れなかった状況が読み取れる。 市では1996年に放置自転車防止条例を施行、2004年3月に一部改正を行い、放置自転車の撤去を随時行っている。札幌駅周辺での撤去実績は、1回あたりおよそ400台強。約2900台ある駐輪台数の約1割強が放置自転車で占められていることになる。 「駐輪場などでは、発見後約1週間をメドに、放置禁止区域では即日撤去しているが、札幌駅周辺では、そもそも駐輪スペースが不足している。南口広場内に駐輪場を設置できればよいのだが、これには企画調整部門などによって、土地の用途変更を行わなければならず、現実的な解決手段とならない。頼みの綱は北5西1地区の暫定駐輪場。ここを拡大し、道立劇場建設の際に恒久化することが唯一残された希望です」(札幌市建設局管理部道路管理課) しかし、自転車の動線は人間と同様に広く、しかもコントロールが難しい。駅前通り周辺に集中する自転車流入を、どうやって拡幅された駐輪スペースに誘導するかといった、頭の痛い課題も残っている。 自転車は人間の動きそのもの。ということは、その様子を見れば市民のモラルも自ずと察しがつくことになる。どうやって札幌駅周辺の放置自転車問題を解決するか、関係者は悩んでいる。
写真:ガラス損壊の現場。手前には放置自転車が残っている。 拝 映輔
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