北海道大学・オウル大学ジョイントシンポジウム「地域からはじめる経済活性化」は可能か/2004-03-31 |
3月23、24日の両日、札幌市内のホテルにて北大、フィンランド・オウル大のジョイントシンポジウム「地域産学連携による経済活性化」が開催された。 開会の挨拶には中村睦男北大総長のほか、山本邦彦道副知事、上田文雄札幌市長、泉誠二道経連会長らが訪れ、北大とオウル大の交流に期待感をにじませた。 オウル大のラウリ・ラユネン学長による基調講演では、90年代からIT分野で瞠目すべき発展を遂げた“オウル現象”の舞台裏と大学が果たした役割について語られ、続く各セッションでは、オウル地域で携帯通信端末のメーカー、ノキア社が勃興するまでの苦心や裏話、IT産業にドメインを定め、いかに周辺企業を支援しているかなどのコメントがオウル組から披瀝された。北海道側からは北大が取り組んでいるリサーチ&ビジネスパーク構想の詳細や産学官連携におけるさまざまな課題が発表され、互いの認識を深め合った。 2日目は、最終のパネルディスカッションの後、ラユネン・オウル大学長から中村・北大総長へ、翌年3月のフィンランド招聘と、両大学・地域の交流促進のためのアピール文採択で幕を閉じた。 パネルディスカッション中、北海道側からよく寄せられた質問の中に、「なぜ、オウルはそれほどまでに成功したのか」というものがあった。 オウル関係者からの回答は、「80年代のオウル地域は製紙製材産業が主流で、斜陽の危機に瀕していた」「今後発展するだろう分野のひとつにITを定め、支援体制を整えた」「支援すべき企業は、情報通信分野に属していて、オウルに本拠を置く企業である」と。 そして、その中にあったのがノキア社だったという。 産学官に一体感のある経済スキーム、共有されている課題意識など、さまざまな特長を備えているオウル経済圏ではあるが、ノキアの存在自体をして“オウルの奇跡”と呼ぶ向きも多い。 北海道でも、学・官両サイドから重厚な支援システムを取り揃えており、あとは産業創造のカギを握る企業さえ発掘されれば、経済活性化につながる可能性は高い。 ただし、 「立派なスタジアムと優秀なコーチ、大勢の観客を揃えても、プレイヤーがいなければ奇跡のゴールなどあり得ない」(パネラーの1人) という声も存在するにせよ、という条件付きでだ。 オウルがノキアを発見したのが“奇跡”であれば、北海道で発掘すべき企業は何なのか。いま1度熟考した方が良い重要な示唆である。
拝 映輔
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