発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・内山俊一氏・北海道経済産業局長/2004-09-12
IT・バイオ等の新規産業と
既存産業とのクロス・オーバーを
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 北海道経済産業局は、高橋はるみ元局長(現・北海道知事)がスタートさせたスーパークラスター振興戦略、稲見雅寿前局長(現・独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構参与)の既存産業支援政策を受け、着実に発展を遂げてきた道内のIT・バイオなどの新規産業。これらを産業として確かなものにするため、内山俊一局長が打ち出しているのは、新規産業と既存産業との“クロス・オーバー”だ。
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 ――北海道の景況はいかがですか。
 内山 道内の景況は4-6月期、ほぼ横ばいであるとしていましたが、7-9月期にかけては、いまのところやや明るさを増したと感じています。個人消費も猛暑の関係で夏物に多少の動きがあり、住宅関連も依然好調を持続しています。年度後半に向けてこのまま力強く推移してもらいたいと考えています。
 ――経済は依然として製造分野が弱く、構造的に弱いままです。
 内山 確かに北海道は厳しい経済状況にあると聞いていたし、実際に見て回りもしました。しかし、一方で強く思ったのは、地域特性としてポテンシャリティが非常に高いということ。とくに農業や観光業などの基幹産業は印象的です。この潜在力が実際に顕在化すれば、北海道経済は大きく変わると確信しています。
 また、サッポロバレーに代表されるIT産業やバイオ産業、環境産業といった新規産業も素晴らしい。まだベンチャー的で規模は小さいですが、磨けば光る原石がたくさんあります。北海道経済産業局の基本シナリオは、今後これらの産業を具体的に発展・展開させることになります。この既存産業と新規産業の2つを融合・協調させることで活性化を果たせると思っています。
 ――IT・バイオと既存産業の融合ですか。
 内山 IT・バイオ分野に関しては、スーパークラスター振興戦略に則って支援メニューを運用してきました。既存産業についても、2004年3月に策定したパワーアッププログラムによって支援メニューを整えております。既存の製造業に対するものづくり支援、十勝地区のチーズブランドなどの地域ブランド形成支援、また、観光ベンチャー支援制度では、ニセコ地区における観光関連事業者のネットワーク作りなどに取り組んでいます。こういった動きを全道的なものにしていきたい。いかに育てるかを考える段階から、いかに実をつけるかを考える段階への移行の段階に入ったと認識しています。
 ――ほぼ新規産業育成の段階は終わったと。
 内山 バイオ産業はまだ規模は小さいが順調に発展していると考えています。IT産業も育ってはいますが、売上規模が5億円以下の企業が大変多いですね。このカベをどうやってブレークスルーしていくかが今後の課題ですが、どんな課題かを調査研究することがまず必要だと感じています。人材、資金、市場など多方面のリサーチ&スタディをしています。
 IT産業は、単体では効果を発揮することはありません。他の産業とのクロス・オーバー、つまりどうやって他の産業に利活用してもらうかを考えなければ、IT産業も他の産業も発展していきません。北海道経済産業局では、IT経営応援隊を組織し、農業や食品加工業、観光産業などへの利活用を推進しています。
 ――既存産業はどういった状況ですか。
 内山 既存産業への支援はスピード感が生命線になります。すでに産業として成立しているわけですから、待ったなしで取り組み中です。しかし、プロジェクト的なものではなく、日常業務の中で地道に取り組み、良い成果に結び付けていく形になっています。どうネットワーク化し、IT・バイオと農業・観光業とのクロス・オーバーを図っていくか。また、どうやってベンチャーや産業情報、イベント情報などを集約・発信していくか、具体的な支援策を勉強しつつ実現したい。
 いま、北海道の企業には、チャレンジングな取り組みが求められています。小さくまとまっていてはいけない。駒大苫小牧高が甲子園で優勝しましたが、彼らの戦いぶりは、ピンチに陥っても縮まらない部分が印象的でした。こういったスタンスは、企業経営者にも重要なことだと思います。
 ――ピンチに陥っても縮まらない経営スタンスですか。
 内山 道内にとどまらず、道外との取引を増すという意味では重要です。トヨタ自動車北海道(苫小牧市)や日本製鋼所(室蘭市)、セイコーエプソン(千歳市)など、国内大手の生産設備が北海道にも数多くあります。地場中堅企業の活性化のためにも、そういった企業を利用することが必要なんです。
 ――具体的にどのような活用になりますか。
 内山 積極的なアプローチを図り、規格に適合したものを作ろうという努力は必ず必要になります。地元工場に行っただけで諦めてはいけません。トヨタであれば愛知に、エプソンであれば信州に乗り込んでいって勝負してこそ、駒大苫小牧高のような“他流試合”が可能になります。実際に見て、自分たちに不足しているものを確かめ、一歩でも半歩でも必要とされるレベルに自分たちを近づけていく努力が、地場企業の経営者には必要なんです。北海道だけで留まらず、道外に出ていくキッカケを掴むということは、そういうことだと思います。もしそこで、トヨタとの取引に成功したとすれば、その企業はすでに世界レベルの水準にあるということですから、もちろん並大抵の努力では上手くいきません。
 ――支援についても、並大抵の努力では上手くいきそうにありません。
 内山 もちろん北海道経済産業局だけではありません。目的の同じ機関が一丸となって進める必要があります。道庁や各市町村、地域の経済界や北海道開発局をはじめとした国の各出先機関との連携・協働が重要です。
 私自身は、北海道で仕事をするのは初めてであり、全く白紙の状態できましたが、北海道が持つ地域の受容力は極めて大きい。何よりも、北海道を愛している人たちが中央にもたくさんいます。事実、道内に生産設備を持つ最大の利点として、優秀な人材が集まりやすい点を挙げている企業がたくさんあります。しかし、残念ながら情報発信されていないために、全国から見ると北海道の利点が霞みがちなのは確かです。そういった利点をどう活かすかが、これからの北海道を活性化する上で大きなポイントになってくると思います。
 ――今後の抱負を。
 内山 北海道経済産業局には、現場を大切にする気風があります。産業や地域経済の最前線に立ち、そこで一体何が起こっていて、どんな考え方で取り組んでいるのかをしっかり吸収し、政策に反映させています。現場と一緒に仕事をすることが大事であり、オフィスでデスクワークをすることだけが公務員の仕事ではないと自覚しています。こういった良い伝統を活かしながら、地域経済の活性化に貢献していきたいですね。
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 6月の就任以来、持ち込んだ自家用車で仕事の合間に道東各地などを巡り歩き、すでに走行距離は2500kmを超えたという。実際に触れた現場の息吹をもとに、内山氏は新規産業と既存産業をクロス・オーバーさせる隘路を探っている。
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うちやま しゅんいち
 1956年7月13日、東京都生まれ。東京学芸大附属高卒。1979年、早稲田大政経学部経済学科卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁、新エネルギー・産業技術総合開発機構、中小企業庁などを歴任し、2003年4月大臣官房政策評価広報課長を経て、2004年6月より現職。
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●北海道経済産業局
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 Tel.011-709-2311
 Fax.011-709-1778
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写真:内山俊一氏
拝 映輔
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