発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・石水勲氏・石屋製菓(株)代表取締役社長/2004-10-04
サマータイム制・小樽再開発で
北海道の独自性を呼び覚ましたい
******
 石屋製菓(株)は、1947年の創業。48年にドロップスの製造を開始して以来、一貫して菓子づくりの道を歩んできた。76年に白い恋人を発売し、北海道内限定発売という営業方針を敷いてからは、土産品としての需要が急増、北海道土産といえば白い恋人というステータスを確立している。現在は札幌商工会議所によるサマータイム制の提案や、小樽出抜小路の再開発計画と、菓子づくり以外の道にも歩みを進めている。
******
 ――1ヶ月に及んだサマータイム制の実験が終わりました。
 石水 第1回目の実験としては、概ね良好に進めることが出来たと思う。参加した企業からは好評でした。今後実験を進めるうちに、道民もサマータイム制についていろいろわかってくると思うし、今後いろいろな話が出てくるでしょう。
 ――今後も実験を続けるんですか。
 石水 僕たちが提唱しましたが、最終的には道民全体の議論として、サマータイム制をどうするか意思決定することが大事だと思っています。今回の参加企業・団体は約200社で、時間についても1時間だけの先行です。今後地域などの規模を全道に拡大していきつつ、5年くらいは実験期間が必要だと考えています。
 ――今回の実験については、どんな感触ですか。
 石水 参加企業も、3日程度の参加から期間全体の1ヶ月に及ぶ参加まで、さまざまな状態でした。長期間参加した企業になるほど、サマータイムについて好意的だったという結果が出ています。全期間参加したサラリーマンの中では、67%ほどが賛成という結果が出ています。
 一番気をつけなければいけないのは、労働過重にならないこと。せっかく早い時間から仕事を始めても、終わる時間が普段通りでは意味がない。戦後GHQが取り組んだサマータイム制では、労働過重の問題が起きて頓挫したという経緯があります。たしかに周囲は普通どおりの時間で仕事をしていますから、会社を閉めて帰るわけにはいきません。ここをシフト制にしていけば、雇用拡大にも繋がるし、労働過重の問題も解決できると考えています。
 ――どうしてサマータイム制を考えたのですか。
 石水 北海道の独自性を打ち出す最良の方法だと思ったからですよ。
 北海道は地理的に日本の最北・最東の位置にある。つまり他の地域より早く1日が始まるわけです。早く明るくなるなら、早く仕事をやってもええやん、ということです。津軽海峡で時差をつけるとか、冬1時間・夏2時間という変則時差制など、バリエーションはいろいろ考えられますが、国内に2つ時計があっても良いのではないか、というのが発想のスタートです。
 また、これを導入すると札幌証券取引所が東京に先行して取引開始しますから、先行市場としての会員獲得といった効果も期待できますよね。道州制を具体的に考える時期が到来している以上、できるだけ有利で、独自性の高いものを考えた方が良いんです。
 ――有利で独自性が高いという点は、その通りだと思います。
 石水 サマータイム制については、10月に長野県の田中康夫知事も来道し、意見交換をする予定です。どうやら長野県でもサマータイム制をやりたかったらしいのです。僕たちは独自性ということも重要視していますから、他地域でも時差制を始めると、とても苦しい状況になりますね。ここは、道民全体の議論が、早く高まっていくよう期待したいと思います。
 ――小樽市では、小樽銀行協会跡地の再開発計画が進んでいますね。
 石水 屋台村の小樽出抜小路ですね。ここは“ヤン衆”“馬喰”“めしや”をキーワードにコンセプトづくりをしてきました。ヤン衆とは地元道民、馬喰は、現代で言えばトラックドライバー、トラック野郎のことでしょうか。 小樽はフェリーやトラックが行き交う流通の拠点で、その活動は24時間休むことがありません。しかし残念ですが、食事を提供する店が夜になると閉店してしまうんです。小樽最大の「うしお祭り」の時に閉店している店舗を見たときには、流石に信じられませんでした。これでは商機を逃がしているようなものです。
 小樽出抜小路では、365日24時間オープンを目指しています。早朝に小樽に着いて、コンビニ弁当をかき込んでいるトラックドライバーに対して、温かい北海道の食材で作った料理を提供していきたい。そうすれば、出抜小路はトラックドライバーや地元市民が行き来する場所になり、交流も自然と発生していくように思うんです。
 ――マチづくりですね。
 石水 商業施設というより、そんな感覚です。ただ、マチの魅力は建物より人であるのは間違いありません。出抜小路は、ガード下の屋台のような存在にしたいと思っているので、なおさら人の思いが重要になります。
 入居者募集も大変な倍率で、選考作業を行うというだけで結構気が重いのですが、できるだけやる気やガッツのある方を選びたいと思っています。
 ――本業の“白い恋人”はどうですか。
 石水 発売開始から約30年経ちましたが、1度も前年割れしたことがなく、右肩上がりの伸びを示しています。古さを感じさせず、北海道のイメージにぴったり合っているのが好調の原因だと思います。
 ――新製品は開発しないのですか。
 石水 新製品開発というのは、菓子屋にとって一種の強迫観念のようなもので、そういう意味では日々続けています。ただ、白い恋人の後を継ぐようなヒット商品を開発しようといった戦略はとっていません。
 白い恋人は、発売以来北海道外で売ったことがありません。いまでも東京方面から引き合いがありますが、必ず全てお断りしています。いわゆる地域限定商法のはしりとも言われていますが、このは白い恋人が嗜好品だからできた戦略であって、必需品や一般商品ではこのようなことは全くできません。
 そして、嗜好品である菓子の世界には200年、300年と続く伝統の銘菓というものが、全国に必ずあるものです。最近は、白い恋人を着実に作り続け、北海道の伝統銘菓にして行きたいと思っています。旨いものは旨い、良いものは良いと、時を超えて言われるような菓子に育ってくれればと願っています。また、本物はそうなるだろうと思っています。人間の遺伝子はそう変わるものではありませんからね。
 まだ30年しか歴史はありませんが、北海道にもそんな菓子が出てきて良い頃合いだと思うんです。
 ――それは、伝統や歴史ということですか。
 石水 その通りです。
 ――そういえば、本社敷地に見慣れない古い建物が増えましたが。
 石水 チュダーハウスですね。英国で実際に建っていた、名前通りチュダー様式の100年前の建物です。組み立ても英国の職人にやってもらいましたが、計画開始から10年と、長い時間がかかってしまいました。
 中にはおもちゃの博物館として「昔の子供のおもちゃ箱」を開設し、30~40代の大人が懐かしく感じるようなおもちゃを展示しています。マリリン・モンローやエルビス・プレスリーの免許証もありますよ。
******
 白い恋人は、卸売ベースで年間85億円の売り上げを誇る。周辺の評価は、まさに“化け物”。これを機軸に北海道に独自の“伝統”を構築する試みに力を注ぐ。サマータイム制や小樽出抜小路でも、独自性と継続性を重視した展開が目を引く。継続あるところに歴史が生まれ、独自性が継承されるところに伝統が生まれる。
******
いしみず いさお
 1944年5月4日、中国大連生まれ。札幌工業高卒、67年東洋大経済学部卒業後、石屋製菓に入社。79年現職。95年より在札幌コロンビア共和国名誉領事、98年よりHFC副社長などを務める。札商常議員で同サマータイム小委員会座長。
******
●石屋製菓(株)
 〒063-0052
 札幌市西区宮の沢2-2-11-36
 Tel.011-666-1483
 Fax.011-666-5566
 http://www.shiroikoibito.ishiya.co.jp/
写真:
拝 映輔
ニュース一覧
インタビュー一覧
コラム一覧
連載小説一覧
TOPに戻る

Copyright© 2004-2024 Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会