発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
海と山を海苔網で繋ぐ―環境リサイクル事業に取り組む愛知県のNPO「エコ・コミュニティー研究会」/2004-10-05
 海苔養殖が盛んな愛知県の三河湾周辺では、毎年大量の養殖網が産業廃棄物として処分されている。一方、山間部の農村では害獣被害に苦しむ農家が多い。廃棄されている海苔養殖の網を、山村部の害獣防除に役立てることはできないだろうか――。
 こんな素朴な出発点からスタートしたNPOが、愛知県下にある。
 NPOエコ・コミュニティー研究会(愛知県西尾市本部・石川孔明代表理事)が行っている事業は、廃棄される海苔養殖用の網を回収・再生し、山間部の農家などにインターネット販売すること。漁村部の産廃問題を軽減するとともに、山間部の害獣農業被害の防止にも役立つビジネスだ。
 このビジネスは、経済産業省平成16年度「環境コミュニティ・ビジネスモデル事業」の、全国15団体の一つとして採択されており、すでに約2400枚(約4t)の海苔養殖再生網が、愛知県幡豆郡一色町衣崎漁協と一色町立一色中学校の総合学習による同校2年生の協力によって集められている。 注文や問い合せも数件あり、中には、北海道のエゾジカ農業被害に対して提供するという案件もあるという。
「ほかにも、つる栽培に使う(家庭菜園)、ガーデニング、隣りの畑との境界線に、住宅のベランダでの鳥よけ、ペットの囲い、瓦が飛ばないように抑える等、さまざまな用途が考えられると思います。漁村部の産廃問題軽減のため、再生網をご利用頂ければ幸いです」
 と、同NPOの榊原正利理事事務局長は言う。続けて、
「この事業は地域課題を遠隔地との連携の中で解決するプロジェクトの1つとして位置付け、活動しています。ほかには例えば、山と海を間伐竹で繋ぐ環境リサイクル事業では、間伐竹を一本800円程度で海苔養殖業者にご利用頂いています。海苔網の例とは逆に、山間部等では、竹林の整備に伴う間伐竹の処理に困っており、一方海苔養殖業者は、海苔養殖に多くの竹を必要としています。本年度は50本ほど実験的に提供しておりますが、この売上は山間部等で活動しているNPOや市民団体等の収益源となっています」
 とも言う。
 エコ・コミュニティー研究会が現在狙っているのは、北海道のまちづくりNPOとの連携事業。
 再び榊原氏が語る。
「北海道では、かつて栄えた町に多くの煉瓦造りの建物がたくさん残っています。その全てを地域の活性化のための既存ハードストックとして活用できれば良いのですが、取り壊され、建設産廃として処分されるものが多くあります。一方、ガーデニング業界では、イギリス等から古いレンガが輸入され売られています。そこで、地域NPOが産廃となる古いレンガを集め、“ガーデニング用北海道レンガ”として販売し、収益事業としていければと思うんです。もちろん、レンガには物語が必要です。北海道○○市○○町に○○年に立てられ、○○として、○○年活用された、○○倉庫(○○ビル)解体によって出たレンガ――。こういった物語が、オンリーワンレンガとして高付加価値となり、文化や歴史、人といった地域のソフト既存ストック情報が、レンガと共に情報発信されると言う効果を生み出します」
 NPOエコ・コミュニティー研究会は、はなれた地域を繋ぐことによって、さまざまな地域課題を解決しつつ、地域のNPO、市民団体の収益性のお手伝いを行うのが、活動の主旨だという。年会費、会費はなく、参加費無料。
 さらに、地域に課題がある場合は、下記URLよりエコ・コミュニティー研究会の会員になれば、MLでさまざまな情報交換の場を提供し、解決手法のプランニングやコーディネートまで行うという。
 地域(コミュニティ)の課題は地域で解決する。解決にコストがかかるのであれば、ビジネスにする。課題まみれの北海道には、愛知の知恵を拝借するのも一興かも知れない。
●NPOエコ・コミュニティー研究会
 〒445-0866
 愛知県西尾市塩町16 0563.NPO事務局内
 Tel.0563-56-3221
 Fax.0563-57-5666
 http://www.0563.net/eco/
●商品注文用URL
 http://www.0563.net/eco/store/
写真:上:榊原正利氏 写真:下:再生された海苔養殖網
拝 映輔
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