発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
スカイマーク、エア・ドゥに経営統合打診・羽田発着枠を巡る戦い/2004-11-09
 羽田―福岡線などに路線を持つ新規参入航空会社スカイマークエアラインズ(株)(東証マザーズ:9204、東京都港区本社、西久保愼一代表取締役社長、資本金66億4796万円)は、11月5日に東京都内で記者会見を開き、北海道国際航空(株)(エア・ドゥ、札幌市中央区本社、滝澤進代表取締役社長、資本金23億2505万円)に対して再生ファンドの買い取りと、それによる経営統合の打診を行ったことを表明した。
 スカイマーク側は経営統合の目的について、
「同型機を使用するエア・ドゥと統合することでコストが削減でき、さらなる運賃値下げが可能になる」(西久保社長)
 としており、続けて、
「実質的にANAグループでありながら、エア・ドゥは羽田の新規参入枠を使っている。提携先のANAと共存共栄を図るため新規参入航空会社としては割高な運賃設定にとどまっており、しかも羽田発着枠の関係から羽田―千歳線に他の新規航空会社が参入するのは困難な状況」
 と、エア・ドゥの現状を批判し、
「当社なら普通大人運賃片道2万円で参入できる」
 と主張した。
 エア・ドゥ側ではこの申し出に対し、
「11月2日にスカイマーク社の西久保社長が本社に来訪されたのは事実ですが、当日はファンドの一部に出資を希望する旨の表明。経営統合にはついては一切聞いていない」
 と困惑しており、
「現在、ANAとの業務提携を基本に、順調に再生計画を遂行している段階。当社の使命は今後とも“北海道の翼”としていまのサービスの維持発展や地域貢献を果たすことにある。ネットワークの拡充やスケールメリット確保などで経営安定化を図っている現段階で、現行のファンドスキームを変更するのは不適切」
 と、拒否する構えだ。
 スカイマーク社は、エア・ドゥ設立のわずか数日前の1996年11月12日に(株)エイチ・アイ・エスの創業者、澤田秀雄会長によって設立された新規航空会社。昨年末にネットベンチャー、ゼロ(株)の西久保会長から資本参加を受け、今月ゼロ社と合併した。現在は羽田と福岡、鹿児島、徳島間に3路線を保有している。路線の開設・廃止には恬淡としており、2003年春に就航した羽田―青森線は約半年で撤退、今年は羽田―那覇線に参入申請したが就航のメドが立たずに撤回。また、過去に新千歳―伊丹線を運航したことがあるが、1年で撤退している。さらに、機体導入の不備により今年秋に計700便近い欠航便を出しているのも記憶に新しい。
 ここで思い出されるのが、総務省による携帯電話用電波割り当て案を不当としてソフトバンクBB(株)(東京都中央区本社、孫正義代表取締役社長兼CEO、資本金1480億円)が行った行政訴訟だ。この訴訟に対して既存携帯電話会社の幹部は、「単に“旨そうだから寄越せ”と言っているような印象をうける」と、感想を述べている。
 1枠の価値が20億円とも30億円ともいわれている羽田空港の発着枠。9月に行われたスロット懇談会によって決定した再配分方式では、20枠が大手航空会社から返上され、これを新規航空各社が“早いもの勝ち”で振り分ける。
 ある航空関係者は、こう解説する。
「エア・ドゥの再生ファンドはANAの経営支援を前提にしており、比率の変更などにも出資上位企業全ての同意が必要とされている。経営統合が実現する可能性は薄いが、今後の発着枠獲得競争を有利に運ぼうという牽制の効果はあるかも知れない」
 会見で西久保氏は、「北海道民のためを思って」と語ったようだが、発言の裏面にはネットベンチャーの“袈裟の下”が透けて見えるようにも思えるのだ。
写真:駐機スポットに向かうエア・ドゥ2号機(新千歳空港)
拝 映輔
ニュース一覧
インタビュー一覧
コラム一覧
連載小説一覧
TOPに戻る

Copyright© 2004-2024 Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会