発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・戸田勇三氏・サッポロビール(株)北海道本部長/2004-11-14
新商品政策も苗穂再開発も
“現場主義”でニーズ把握
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 昨年7月に純粋持株会社制へ移行し、サッポロホールディングス(HD)を先頭にした企業集団へと生まれ変わったサッポロビール。2004年6月の中間決算(サッポロHD)では、売上高が前年同期比4%増の2243億02百万円、経常利益は4期ぶりの黒字となる32億99百万円の黒字、純利益も28億49百万円の黒字となった。
 好調の原因は、今年2月に全国発売された「ドラフトワン」のヒットと言われているが、これが名門サッポロの“反撃ののろし”となるのだろうか。
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 ――9月に札幌支社から北海道本部に名称が変わりました。
 戸田 権限を現場に厚くするという、サッポロHDの施策の一環です。実は、サッポロHDの発足と前後して地区本部制を敷いていたんです。札幌支社も「支社」と言いながら機能的には地区本部でしたが、札幌工場のビール製造停止のインパクトを考慮し、また地元に対する愛着もあって呼称変更に1年あまりを掛けたんです。営業的には札幌支店を継続・発展させ、道央地区(恵庭市内)には北海道工場があり、ここ苗穂でもあらたに博物館のリニューアルをかけている。発祥の地である北海道、そして札幌に寄せる当社の姿勢が以前と変わらないことが札幌市民の方がたにも納得して頂けたと判断したため、地区本部呼称を導入したということです。
 ――具体的にどんな部分に変化が。
 戸田 お客様に対しては、よく冗談で「立場は全く変わっていません」と言っています。実質的に本部長と支社長では、肩書き以外何が違うということはないんです。変わったのは営業の組織体制。家庭用・業務用各々に特化した組織に改革することで、機動的な営業活動が出来るようになったと思いますね。さらに、売上が伸びて自信がつくと、行動も変わるものです。
 ――今年は「ドラフトワン」などの新商品がよく売れました。
 戸田 まず、エンドウたんぱくを原料にした「ドラフトワン」が良く売れました。販売目標数量も上方修正に次ぐ上方修正で、全国的にもかなり好調に推移しています。これを発売して実感したことは、美味しいお酒を創りたいという意欲にかけるサッポロの技術力は、物凄いものがあるなということですね。ただ、道内でのドラフトワンの全社内販売構成比は、実はそれほど高くないんです。もともと黒ラベルやクラシック、ヱビス、生搾りが高い支持を頂いていますので、数量的には低くなくても構成比としては低くなる訳です。
 ――1本1000円の豪州ワイン「イエローテイル」も売れていますね。
 戸田 味わいと価格のバランスは勿論、ネーミングやパッケージなど、シンプル&ストレートさが受けたものと思いますが、輸入ワインとしては画期的な数字となっています。初回のオーダーが予想以上に膨らんで、当初準備した在庫をほとんど吐き出してしまったんです。それで2回目以降の注文に対応出来ず、船便で安定数量が到着するまで、緊急に空輸でしのいだのですが、需給を逼迫させ、各方面に少なからぬご迷惑を掛けてしまいました。
 ――低価格ワインを空輸するなど、普通はしませんね。
 戸田 まさに出血覚悟。空輸分についての利益はマイナスです。需要予測が上振れした結果の緊急措置ですから仕方有りませんね。しかし、サッポロがここまでしてお客様の信頼をつなごうとした会社だということは、製造元のカセラ社にも充分理解して頂いたと思います。
 もともと、カセラ社とサッポロには企業姿勢に似た部分が多いんです。カセラ社は、生産場面から一気通貫の製造体制を敷き、社長自身もぶどうづくりに携わっていると聞いています。そんな会社だからこそ、私どもの標榜する「協働契約栽培」方式で、生産者と一体になってやっているスタンスにも共感して頂けたんでしょう。単なる製造元と販売元という関係ではなく、パートナーだと私は認識しています。
 ――パートナーですか。
 戸田 「イエローテイル」の販売権獲得には、やはりさまざまや競合会社があったと聞いています。そんな中で、よくぞ先方と当社が1000円で発売するという決定を下したと思うんです。営業担当が、これだけの品質のワインを1000円でと言えば、自信をもってお薦めできる。昔のように販売ノルマがあって、その数量に達したかどうかで関係を決める時代は終わった。これからはお互いが本音でやり合う時代なんだな、と、妙に納得したんです。
 ――札幌工場の跡地も、再開発の計画が固まってきました。
 戸田 そうですね。今回の場合、エリアトータルでみた敷地の大部分の開発主体はイトーヨーカ堂さんであり、ヨーカ堂さんが店舗を建設するのに合わせて、サッポロはビール博物館とビール園の一部をリニューアルすることになります。
 ――どんな内容になりますか。
 戸田 イトーヨーカ堂さんの新店舗については、私どもは詳しく知りません。ただ、出店によってこの地域が活性化するだろうと期待しています。
 ビール博物館は、12月中旬のオープンを目指して工事中です。展示内容は全面入れ替えし、ビジュアルを重視した体感型の展示を目指しています。
 じつは、博物館の中で悩んでいるのが、東側の景観、つまり工場があったときの裏側にあたる部分なんです。もともと工場に隠れていて、開かない窓があったり空調の機械などが無造作に置かれている。今度はそちら側に店舗が出来、見渡せるようになるというわけで、化粧直しが大変なんです。煉瓦造りの煙突にある「サッポロビール」の文字も、いままで一方向しか書かれていませんが、今後は360度どこから見られても大丈夫なように、2ヶ所分書き込むことになります。周辺環境ともマッチした品格あるたたずまいを残すため、結構難儀な工事になっているようです。
 ――周辺と言えば、北海道遺産にも選定されました。
 戸田 “苗穂工場群”ですね。これは、当社だけではなく、周辺にある福山醸造や雪印札幌工場等も含めてのことです。活性化につながる、大変ありがたいことだと受けとめています。
 ――ビール園はどのような改装を。
 戸田 ビール園の利用客はオープン以来30年余で、かなり変わって来ました。開業当時はバスが何台も連なるような状態で、団体客でのご利用がほとんど。一方いまは、個人やグループでのご利用も増えてきています。こういった小グループにもご利用しやすいよう、大きな空間を仕切った部分も必要かな、と思っていますよ。料理もジンギスカンをはじめ、道産材料にこだわったものを提供していきたい。ジンギスカン以外の、名物になるような新メニューも欲しいところです。
 ――現状の3棟5ホールの体制も見直していく可能性があると。
 戸田 まだ、検討段階ですね。いまのところ、煙突を中心に広場をつくり、憩いの場にする計画があるんですが、ここをどう造るかが決まらないと何とも言えません。
 ただ、新しい苗穂地区は、回遊性の高いエリアになれば良いと思っているんです。たまたま、恵比寿ガーデンプレイスのファーストフード店で朝食を3日続けて摂ったことがあるんですが、その店の前に犬を連れた人たちがどんどん集まってきて、何やら談笑している。集会所になっているんですね。それで犬中心の会話で盛りあがる、いいなと思いました。
 苗穂でも、そんな風景を期待しています。何か明確な目的がなくても散策できるような緑豊かなエリアづくりになれば嬉しいですね。
 ――今後について一言。
 戸田 ドラフトワンがブレークしましたが、これはスッキリした飲み味がお客様にご評価頂いてのものと思っています。“ビール風”とか“第3のビール”、と言われることもありますが、当社はもとよりビール代替商品として考えてはいない。全く新しい酒文化やシーンを創造しているつもりです。これの定着をもう少し図っていきたい。
 北海道エリアに限れば、もう少し地産地消を意識した販売を仕掛けるつもりです。道産原料使用の「北海道生搾り」をはじめ、「協働契約栽培原料の100%使用」を前面に出した活性化を図りたいですね。あと、「クラシック」の贈答需要も掘り起こすつもりでいます。せっかく「北海道限定」なんですから、道外に贈ればきっと喜んで頂けるはずです。しかし、あくまでも基本は“お土産”ではなく、その地で消費して頂けるもの。
商品開発もドラフトワンで終わるわけではありません。開発力は企業力の源泉だと思います。お客様のニーズを的確に把握し、会社全体に反映させるためにも、いままで以上に現場主義でスピード感のある営業活動に取り組みたいと思います。
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 体制発足当初はさまざまに揶揄された純粋持株会社制だが、サッポロビールに関しては地区本部制が機能し、猛暑の助けもあってどうやら有効に作用した模様だ。その一方で、ヒットしたドラフトワンは政府税調の目に留まり、増税に向けた議論が始まっている。「学生は本物のビールを飲まず、ああいうものを飲む。酒の文化を損なっている気がする」と税調幹部が言ったというが、一方のサッポロは、例えば麦芽100%のヱビスこそ本物のビール、とは決して言わない。「ドラフトワンは酒文化の創造・提案である」とは、戸田本部長の言。
 業界初の缶入りワイン「シングルメイド」の発売など、サッポロは開発力を頼みに、新たな酒文化の創造に力を注ぐ。
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とだ ゆうそう
1946年6月11日、広島県生まれ。70年一橋大社会学部卒業後、サッポロビール入社。88年東京支社東京西支店長、90年東京支社東京新都心支店長などを経て、02年広域営業本部外食営業部長。03年に執行役員となり、04年3月より常務執行役員兼札幌支社長兼北海道本社代表代行。9月、機構改革により現職。
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●サッポロビール(株)北海道本部
 〒065-8632
 札幌市東区北7東9
 Tel.011-742-1110
 Fax.011-704-2463
 http://www.sapporobeer.jp/
写真:戸田勇三氏
拝 映輔
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