発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
「連携から転換へ…」産学官連携推進事業主催セミナー「連携・北海道活性化のために」開催/2004-12-01
 12月1日、札幌市内のホテル「札幌ガーデンパレス」で、道内12機関・団体で構成された産学官連携推進事業実行委員会が主催するセミナー、「連携・北海道活性化のために~産学官連携による北海道経済活性化の方策~」が開催された。
 基調講演は、東京大学の月尾嘉男名誉教授による「北海道活性化のビジネス戦略」、および荒井寿光内閣官房・知的財産戦略推進事務局長による「産学連携と知財戦略」。
 月尾氏は、日本と世界各国との国際競争力比較によって、日本がこれまで陥って来た戦略不足を繰り返し指摘、知財戦略においても、その法的整備や司法システム整備が米国より約10年遅れていることを明らかにした。一方で、少子高齢化や政府財政の極端な悪化など、日本が同時に体験してきた経済環境・社会環境の“転換期”についても触れ、今後の価値基準がモノ中心から情報中心へと遷移しつつあると説いた。
 その中で、北海道が採るべき戦略のヒントとして、
「従来は資源・政府・財力が成功の要素だったが、これからは情報・民間・魅力が成功を引き寄せる原動力となる。ITで構築される情報世界には、距離からの解放、階層構造の打破など、既存の価値観を転換し、現在数少なくなったフロンティア性がある。まずはそこで情報発信を強化し、地域の魅力を訴求すべき」
 と訴えた。また、
「1,2,3次といった階層的産業構造は、将来的にあてはまらなくなる。1次を環境保全、2次を資源循環、3次を生活支援、情報共有、次代育成と、機能別に分類し、それぞれの充実と戦略転換を図るべき」
 と唱えた。
 荒井氏は日本と米国の知財戦略を比較し、現代の時間的尺度で換算すると、約100~150年の差をつけられていると断じた。一方で、近年の政策として2005年の知財高裁開設や改正信託業法の成立、法科大学院の開設などに触れ、急速に知財活用が可能な環境が整えられつつあると指摘、
「今後の地域活性化には、知財の創造→活用→利益還元という知財サイクルを素早く、大きく動かさなければならず、そのためにも地域の知財戦略は不可欠。そのためにはプレイヤーとなる中小企業の活性化が必要であり、特許料減免や特許電子図書館(IPDL)の拡充などさまざまな施策を行っている。北海道における地方行政(道・札幌市)・国家行政(道経済産業局)・経済団体(道経連)・大学(北大)の地域連携協定に期待している」
 と語った。
 パネルディスカッションは、パネルに産学連携学会長の湯本長伯九州大産学連携センター教授、小樽商科大ビジネス創造センター(CBC)副センター長でビジネススクール助教授の瀬戸篤氏、NPO法人札幌ビズカフェ代表理事のサンエス電気通信(株)宮田昌和社長、北海道経済産業局の浅野欣司地域経済部次長の4名、コメンテーターにデジタルニューディール研究所の出口俊一社長、北海道東海大地域連携研究センター長西村弘行教授の2名、コーディネーターに北大先端科学技術共同研究センターの荒磯恒久リエゾン担当教授が就き、産学連携を経済活性化に具体的に役立てる方策について、意見を述べた。
 現在の道内の状況を各パネラーは、「民間企業には、やっと瀬戸際に立った感覚が現れてきた段階。従来の経営環境をいかに転換するかに腐心している。ビジネスチャンスの場としてビズカフェを設立したが、IT業者だけが集まっても意味がない」(宮田氏)、「大学の知財が経済活性化に資するには、知財そのものの戦略的商業化が不可欠。そのために海外のTLOでは民間人を多く登用している。今後は大学に投資して果実を得ることが普通になる。これは大学の知財活用にとっても不可欠の要素だ」(瀬戸氏)と、各方面から捉え、今後について、
「連携が成功する仕組みとは、相互理解と相対化がしっかり機能しているかどうか。これに対する学術的研究とデータの蓄積を行うために、産学連携学会は設立された。今後来るべき知識基盤社会に、連携のスキームは唯一のフロンティアとなるはず」(湯本氏)、「2002年にトップバッターとして整備が始まった北大北キャンパスも基盤整備が進んで来た。今後は道内各中核都市にも、同様の動きを広げていく段階になる」(浅野氏)、「産学連携の機運は高まってきたが、事業化にはもう1ステップ必要。そのために今後はどうやって資金をうまく活用すべきか議論する段階だ。投資サイドに技術上の目利きが出来、プレイヤーに将来構想力があれば、資金を有効活用できるという段階に、やっと達したという思いだ」(湯本氏)と展望した。
 問題もある。パネラーの1人が「ビジネスエキスポとインキュベーションフェアが同日開催されるように、支援機関側も連携が取れていない」と指摘したように、まだ無駄が多いのも事実であり、「将来的に産学連携は、官の姿が見えなくなるほど後退して、真の成功を見ると思う」と語ったパネラーもいる。
 産学連携の先に地域経済の活性化が見えてきたのならば、さらにその先に見えるものは一体何か。
 コーディネーターの荒磯氏が結論づけたように、それは「連携から転換へ」と至る、“社会にパラダイムシフトを起こす道筋”であるべきではないだろうか。
写真:上:パネルディスカッションの様子。左より荒磯恒久氏、浅野欣司氏、宮田昌和氏、瀬戸篤氏、湯本長伯氏、西本弘行氏、出口俊一氏 写真:中:細川修実行委員長 写真:下:左より月尾嘉男氏、荒井寿光氏
拝 映輔
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