発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・滝澤進氏・北海道国際航空(株)代表取締役社長/2004-12-12
函館線は路線構築の中間点
新路線へ“時間との勝負”
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 北海道国際航空(エア・ドゥ)の中間決算が発表された。売上高は114億7700万円で前年同期比38.2%増。経常利益も15億0300万円と、前年同期比90.5%増になり、2005年3月の再生計画完了を確実なものにしている。機首を上げつつある2005年のエア・ドゥは、再生計画の終了に前後して函館線に新規就航、旭川線に投入した3号機のB-737への入れ替え(リプレース)など、多事多端。操縦桿を握る滝澤進社長に、再生完了後のエア・ドゥの航路を聞いた。
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 ――中間期決算は、2期連続黒字になりました。
 滝澤 旭川線の通期化でスケールメリット効果を発揮したのが要因です。今中間期の2路線平均搭乗率が80.6%。当社に対して、予想以上にお客様からの支持を頂けたのが最大の喜びです。原油高などマイナスの要因もありますが、通期でも黒字を予想しています。
 ――スカイマークが、エア・ドゥとの経営統合を模索しているようですが。
 滝澤 スカイマークの西久保社長は、11月2日に当社を1度だけ訪れました。話の内容は、政策投資銀が保有する株式についてオファーを出したいということ。それだけです。あくまで利益を追求するスカイマークと“北海道の翼”を目指す当社とでは事業の方向も違うので、スカイマークが望む形にはならないだろう、とお伝えしました。
 11月5日に、スカイマークが東京で記者会見を行いましたが、これも当社に申し入れなどはなく、一方的に経営統合したいと宣言したようです。その後も当社に全くコンタクトはなく、当社の株主にも具体的な話はなかったと聞いています。
 ――スカイマークとの経営統合はありませんか。
 滝澤 両社では全く発想が違います。もしスカイマークなら、年間1000万人の利用者を抱える千歳線以外の空港には飛ばなくなるでしょう。当社は、できるだけ安価な運賃を継続的に提供して航空総需要を拡大し、首都圏と北海道各地に航空ネットワークを充実させ、地域振興に貢献しようと考えて航空事業をやっているんです。
 ――スカイマークもJALグループとの共同運航を行うと聞いています。
 滝澤 新規航空会社が、自らの理念をどうすれば果たすことが出来るのかを考えたときには、共同運航も当然選択肢に入るでしょう。
 当社の場合も、ANAとの業務提携によって安定的な収入を確保し、重整備などの負担を軽減できる。大手航空も整備部門の回転率が向上し、共同運航によって路線維持コストを低減できるわけです。ただし、双方に利益がある形になり、しかも両者の間に信頼関係が成立していなければ、業務提携も上手くいきません。
 ――函館以降の新規路線の展開は。
 滝澤 函館線に続けて第4、第5、第6の路線を展開したいところですが、それは小回りの効くB-737型機による生産体制の構築が前提です。
 羽田の発着枠には、もともと新規参入枠が8枠あり、4枠を当社の函館便で使用、残る4枠はスカイマークが関西―羽田便の開設に使います。これと別に、スロット懇談会で決定した再配分枠が20枠あります。2006年3月に開港する新北九州空港にスターフライヤーが6枠、長崎―羽田線にスカイネットアジア航空が6枠使い、残りは8枠です。残り6枠を下回ると当局が調整します。
 当社は3月の函館線就航に合わせてB-767を1機投入、6月に3号機の入れ替えでB-737を1機導入します。これで機材の準備が完了し、次に新規路線の開設のため、B-737の2機目以降を調達するわけですが、果たしてそのとき羽田の枠が残っているか、また、これらの準備作業がどれだけ早く終えられるのか。
 何しろ新規路線の開設そのものが時間との戦いになっている状況なので、可能な限り新規路線の開設に向けて準備を進める、というほかありません。
 ――函館線就航によっても、スケールメリットは見込めますか。
 滝澤 計算上ではスケールメリットの効果は曲線を描きますが、実際の運用では階段状になるんです。
 当社では4号機の導入によってダイヤが輻輳し、地上スタッフをもう1チーム増やす必要が出てきます。当然客室スタッフやパイロットも必要です。人員を大きく増やすため、旭川線就航時ほどのスケールメリットは享受できない。できればあと1~2路線は開設しておきたいのが本音です。
 羽田空港の発着枠に関しては、運用法の改善によって、あと数枠程度収容できるという見込みもあります。果たしてどの程度枠が出るかは何とも言えませんが、準備を万端に整えつつ、ライバル社や羽田空港自体の動きを注意深く見守らなければなりません。
 ――「4番目の路線」はいつ頃就航になりますか。
 滝澤 2009年には、羽田空港が再拡張され、現状の4割程度発着量が増加します。私は従来から7機20枠を、スケールメリットが享受できる最低限のラインとしてきましたが、09年までにそのラインのどこまで近づけるかがポイントです。
 ――2009年まで静観はしない、と。
 滝澤 2009年の羽田再拡張は、新たな競争の時代のスタートを告げるものだと思います。それまでに、当社の経営基盤をどこまで強固なものにできるか。現在当社は、副操縦士の自社養成や地上スタッフの充実など、路線拡張に向けて先行投資を行っている段階です。これがフル回転するような事業環境を整えることが、当面の責務ですね。幸い、再生計画も今年度末に終了しますし、先行投資に耐えるだけの財務体質は確保しつつあります。
 今後も“北海道の翼”は、道内のより多くの地域と首都圏を結んで利便性を向上させ、ご支援頂いた道民の方々により多くのメリットを生み出せる会社になっていきたいと思います。
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 エア・ドゥの再生計画開始後で充実したものは、昨年就航した旭川線や来春就航予定の函館線などの路線とともに、何よりも黒字を毎期計上できるようになった財務体質が挙げられる。当面は先行投資の局面が続くが、増資などによる財務体質の強化は「いまのところ」考えていないという。一方で、好調なエア・ドゥに旨みを感じたのかどうか、スカイマークによる一方的な経営統合の打診など、周辺にもさまざまな動きが見える。2007年には再生ファンドが一応の区切りを迎える。それまでに安定した株主構成を模索することも、同社にとっては急務だ。
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たきざわ・すすむ
北海道国際航空(株)代表取締役社長
1944年9月18日、長野県生。69年東大教養学部卒業後、運輸省(現・国土交通省)入省。内閣外政審議官、航空局管制保安部長、東京航空局長を経て97年退官し、日本観光協会理事長へ。03年1月より現職。
写真:
拝 映輔
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