発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・平池暁氏・北海道フードフロンティア(株)代表取締役社長/2005-01-16
北海道ブランドの食品を
日用品の域に浸透させる
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 2004年10月16日、東京駅前のビルに、北海道の物産を専門に扱う店舗、北海道フーディストが開業した。主な商品は乳製品や海産品など、「北海道ブランド」のブランディング・パワーの源泉たる食品部門にターゲットを絞っている。運営するのは、北海道電力(株)の子会社として、2004年7月に設立された北海道フードフロンティア(株)(札幌市中央区本社、資本金1億円)。社長を務める平池暁氏に、東京での道産品の需要動向や今後の事業戦略を聞いた。
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 ――10月のオープン以来、客足も順調のようですが。
 平池 ありがとうございます。店舗では店頭販売のほか、道産食材を使ったイートイン、ギフト販売、インターネットによる通信販売や催事・イベントなどを行っています。まだ年間を通じて客足を見ていないため、はっきりとしたことは言えませんが、今のところ順調です。
 ――どんな商品を扱っていますか。
 平池 扱う商品の基準は、メーカーが北海道に主な活動拠点を有しており、主要な原材料、あるいは副材料にも可能な限り道産品を使用しているもの。当然ですが、生産や製造の過程でも、徹底した衛生管理に努め、品質や安全性の向上に取り組んでいるものを扱っています。
 店舗の北海道フーディストには約1000点の商品がありますが、その中で定番商品には、商品供給体制への不安がない卸ルートを経由して来るものが多いですね。独自で開拓した商品は、こだわり商品として取り扱っています。北海道で生産された食品ということ自体にブランド力はありますね。
 具体的な商品について詳しくは言えませんが、とくに水産品・農産品や乳製品には力強い効果を発揮しています。
 ――どうやって1000点の商品を集めましたか。
 平池 まず道内の支店・営業所など、ほくでんのネットワークが発掘した情報や、卸ルートからの情報提供があります。道内各地で事業説明会を10回以上開いて、そこからピックアップを行いました。輸送コストや嗜好の問題なども含めて、今後ある程度経過したら、商品の入れ替えなどを検討していかなければなりません。
 ――北海道プランドを前面に押し出した小売店は、いままでありませんでした。
 平池 東京には道庁の「どさんこプラザ」やベッコアメなどがありましたが、道内民間資本での出店では初めてです。いままで、物産展など北海道の地域ブランド力を活用したビジネスを行っていたのは、本州大手流通や百貨店などといった道外資本です。つまり、北海道ブランドによって得られるはずの利益が、道外に流出していた。北海道の力で末端の消費者まで北海道ブランドの力を届けることが出来れば、これほど素晴らしいことはないわけです。
 ――今後の展開は。
 平池 05年度からは、物産と観光を組み合わせていきたいと考えています。消費者と生産者との距離を近づけたい。そういう意味では、店舗に立つと消費者の声が直接入って来ます。こういった声を生産者にお届けするのが重要な役目であると同時に、消費者自身も「生産現場を見たい」という要望を強く持っていますから、これは私たちの仕事だろうと思っています。消費者に対しては生産現場を見て頂き、安心や安全を実感してもらいたい。生産者の思いも、その場で消費者に伝えて頂けるはずです。
 ――生産現場訪問のパッケージツアーですね。
 平池 受け容れ先は、ある程度の目星をつけています。消費者を呼ぶと言っても、まず生産者の方に受け入れる意思があるか、受け入れられる態勢が出来ているかどうかが重要な要素になります。「来たいなら来ても構わない」という生産者のところへ消費者をお連れしても、結局のところ消費者に満足して頂くことできません。「ぜひ来て欲しい」と思っている生産者を探すところからのスタートなんです。そういう意味では、本格的なルートの開拓はこれからです。
 ――道産品のプロモーションとしては、頼もしい存在になっています。
 平池 北海道フーディストは、公的セクタによるアンテナショップでもなく、一時的な物産展でもありません。歴とした常設店舗です。生産者の思いも大事にしつつ、利益を出していかなければならない。東京には購買力があり、ここで販売を行うことに活路を見出すという答えはあるはずです。一方、地元の北海道には経済の停滞感は色濃く残っています。これを良しとするなら、それでも良しです。しかし、これを嫌うのであれば、何らかのアクションを起こさなければならない。そういう意味での妥協と戦う姿勢は、生産者とともにしっかりと打ち出していかなければならないと思いますね。
 ――妥協とは。
 平池 私の仕事は、北海道の食品を持っていき、北海道にお金を持ってくることなんです。食品分野には、北海道経済を牽引するだけの力があります。しかし素材品が多く、2次加工品があまりありません。加工にトライしないと付加価値がつきません。何故かというといままでは、生産者と末端消費者との交流がなさ過ぎたんです。フーディストには、消費者の生の声が日々届きます。これをヒントに、生産者の方たちにとっても、より大きな付加価値を得られるようなムーブメントを起こしていきたい。
 ――なるほど。試行錯誤が続いて来た製品開発にも、マーケティングデータで支援したいというわけですね。
 平池 当然、トライアルには失敗がつきものです。価格やパッケージングなど、どうしても消費者に受け容れてもらえない事例もたくさん出て来ます。私たちも事業として行う以上、品質や供給体制が不安定なアイテムを扱い続けることも難しい。
 生産者の方たちには、物流面でのそういった問題点や課題の在り処を、包み隠さずお伝えしようと思っています。そして、それに対して改善できた生産者の方たちとお付き合いを深めていくというスタンスです。
 ――そう考えると、「常設店舗としての北海道フーディスト」は、非常に興味深い試みです。
 平池 いままで公共事業に依存してきた北海道では、民間企業の全てがおっとりしています。これから公共事業投資がどんどん縮小されていくわけですから、今後は口を開けて待っていても無駄です。当然、評論だけでも駄目。まず行動しなければならない時代なんです。
 とは言え、実際に事業を始めてみると、コスト削減は常に意識しなければならず、利益も薄い。食品流通のプロの方々は凄いと思いますね。言うは易く行うは難し、です。
 ――なぜ、今回のような試みを。
 平池 実は、私は産業クラスター構想の草創期に、当時の道経連会長だった戸田一夫氏(現:NOASTEC理事長)とともに、各地のクラスター研究会設立に関わる仕事をやっていたんです。当時から、開発力のある中小企業にとっての最大の悩みは「販路」がないこと。中央に販路があれば良いという声をたくさん聞きました。これが発想の原点です。本州で行われる北海道関連の物産展は盛況です。そこにビジネスチャンスがあり、北海道にも貢献できるのではないかと考えていました。
 ただし、物産展で売る場合は手頃な土産品としての需要です。フーディストが常設店舗である以上、土産品を売るだけのものにはしたくありません。ここを足場に、どれだけ日用品としての土俵に食い込んでいけるかが、勝負のカギになると思っています。北海道ブランドのブランドイメージに加えて、フーディスト自体のブランドイメージをより良いものに構築し、いずれ首都圏に複数店舗を展開したいと思っています。
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 沖縄県物産公社が展開している「わしたショップ」は、全国に19店舗を展開し、年間約60億円を売り上げる。一方、北海道の物産販売は、民間道内資本では今回の「北海道フーディスト」の出店が初。年間約30回行われる公営物産展や公設店の「どさんこプラザ」などを含めても「わしたショップ」とほぼ同額、約60億円に過ぎない。スペシャルティ(特殊品)の品質と付加価値をいかに残しつつ、パイの大きなコモディティ(日用品)へと浸透させるか。北海道フーディストの挑戦は、北海道のブランドパワーを高め、北海道自体の手で育てていく試みでもある。
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ひらいけ あきら
1958年1月10日、札幌市生まれ。82年、早稲田大社会科学部卒業後、北海道電力(株)入社。99年よりHOKTAC(現:NOASTEC)クラスター事業部に出向、2002年、北大(院)経済学研究科修士課程を修了し、北海道電力(株)事業推進部事業推進グループリーダー。2004年7月、北電グループ子会社として北海道フードフロンティア(株)を設立、代表取締役社長に就任、現職。剣道錬士6段、SAJ公認スキー1級。
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●北海道フードフロンティア(株)
 〒060-0041
 札幌市中央区大通東2-3-1 松村ビル2号館3F
 Tel.011-261-4321
 Fax.011-261-7654
 http://www.foodist.co.jp/
●北海道フーディスト
 営業時間 10:00~20:00
 年中無休(12月30日~1月4日は休業)
 東京都中央区八重洲2-2-1 ダイヤ八重洲口ビル1F
 Tel.03-3275-0770
写真:上:平池暁氏 写真:下:北海道フーディストの外観
拝 映輔
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