発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
「クリーンエネルギーをブランドに」ローカルエネルギーシンポジウム開催/2005-02-18
 京都議定書が発効した翌日の2月17日、札幌センチュリーロイヤルホテルで(社)北海道総合研究調査会(HIT・広畑民雄会長)が主催する「ローカルエネルギーシンポジウム」が開催された。
 ローカルエネルギーとは、大量採掘・大量消費型の既存エネルギー源と比較して、賦存量が少量、かつ地域に依存しているエネルギーのこと。つまり、自然エネルギー(再生可能エネルギー)のことである。
 基調講演は、(社)日本経済団体連合会環境・技術本部の青山周環境グループ長が行い、地球温暖化問題への危機意識を背景に生まれた京都議定書の概要と、国内における炭素排出量削減の具体的目標や課題、また、対策の一つとしてローカルエネルギーの普及促進が果たす役割の重要さが語られた。
 事例報告・パネルディスカッションでは、道経済部資源エネルギー課の志村幸久課長と滝川市環境課の橋本英昭氏から、ドイツ・オーストリアのバイオマス利用や燃料作物の栽培事情など、ローカルエネルギーの導入事例や、滝川市の広域生ゴミバイオガス発電や「菜の花プロジェクト」などのバイオマス利用、道内における普及促進策との比較などが語られた。
 釧路工業技術センターの東藤勇センター長は、白糠町で研究開発が進められているDME(ジメチルエーテル)の直接合成プラントの特長やDMEの燃料としての特性などを解説、サンエス電気通信(釧路市本社)の宮田昌和社長からは、同社が北大や道立工業試験場などと共同開発している水素ガスの形で電力を貯留する風力発電・燃料電池複合システムが紹介された。また、北見工業大学の鈴木勉教授(化学システム工学科)は、木質系バイオマスの物質変換技術の一つとして、ニッケル触媒を利用した炭化技術を紹介、この方法によって結晶炭素やメゾ細孔を持つ高機能炭素素材が生産可能であると説明した。
 パネルディスカッションの議論は、道内でのローカルエネルギーの取り組みは先進的なものであるが、普及については制度上の問題などで進んでいるとは言い難いというもの。だが、それは“戦略の欠如”や“コンセンサスの不足”という簡単な言葉で片付けられる性格のものでもない。
 宮田氏は、パネルディスカッションの中でこう言った。
「国内の風力発電施設の大部分は北海道・東北に集中している。ここで問題となるのは“系統連系”の問題。北電自体は電力の安定供給のため、風力発電の発生電力を全て受け容れるわけにはいかない。だが、他地域にはローカルエネルギーが不足している地域があるのも事実。これを解決するには、各電力会社を結ぶ連携線の容量を拡大しなければならないが、この原資は誰が出すべきか。ローカルエネルギー自体も、洗練していけば北海道のブランディング・パワーとして十分に相乗効果を発揮するはずだ」
 不安定な風力発電であっても、より広域的な連系を考えれば需要に行き着くというのは、荒っぽい考え方だがある意味的確。水素を介在させたエネルギー貯留という考え方は以前からあるが、より安定性が高いDMEへと加工する技術にも光明が見え始めた。地域の長所を引き出し、他地域との共存を図るためには、このような問題を一つずつ洗い出し、解決しなければならない。
●(社)北海道総合調査研究会
 〒060-0004
 札幌市中央区北4西6 毎日札幌会館
 Tel.011-222-3669
 Fax.011-222-4105
 http://www.hit-north.or.jp/
  
写真:パネルディスカッションの様子。
拝 映輔
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