GEL-Design社とままのぽっけによる提携商品の発表は、新しいNPOと企業との連携のスキームを示すものとして大変興味深い。詳細は、本誌2005-5-31の記事をご覧頂きたい。 近年、CSR(企業の社会的責任)といわれる概念が叫ばれ、その受け皿として、各種のNPOやボランティア団体などが注視されてきた。残念ながら、そうした活動の多くは一方的な「寄付」を対象としたものであり、「社会構造を歪ませた経済一辺倒の活動をする企業による贖罪」という形式での、NPOと企業との連携というのが目立った。一定規模以上の企業が、CSR室や財団等を設け各種団体からのプロポーザルに対し一定金額の寄付や助成をするというのがそれだ。 しかし、企業による経済活動は一方的に悪で、そうした団体に対して「贖罪としての寄付」をしなければならないのだろうか?私はそうは考えていない。そうした社会的責任を含め、サービスや商品を適切に提供し続けることこそが、企業による経済活動の本質であるべきである。 それならば、NPOなどの団体の存在意義は何かという疑問が出てくる。地域に根差し、フェイスツーフェイスで日夜活動する事により、利潤を度外視してでも、適切な地域問題の把握力、それに対する直接的な活動力が圧倒的に優れている。この二つは、企業単独や企業連合や、それこそ、産学官の連携だけでは彼らに全く追いつかない部分である。この、把握力と活動力をいかに、自分達の指向性にあった企業に、タイムリーに提供できるか、また、企業のほうもそれをいかにサポートできる製品やサービスを生み出していけるかがカギになる。 この、GEL-Design社とままのぽっけの連携によるお弁当箱は、ままのぽっけによる、まさに把握力の提供といえる。その後この製品を認知販売する上で、彼ら(彼女ら)の活動力が加われば全く新しい、ベンチャーとNPOの連携のスタイルとも言える。 ちなみに、こうした全く新しい、「お互いに汗を流す真の協業型」とも言えるNPOとベンチャー企業の連携は全国でもすこしづつ増え始めている。 例えば、昨年、防災ボランティアのNPO愛知ネットと独自iDCを運営するチロロネットが協業を発表した。防災時のITのベースキャンプとも言えるiDCを多重化分散化のサービスを得意とするチロロネットが提供し、そのシステムや運営、実際の実働、訓練等々を地域のNPOであるNPO愛知ネットが提供するというものだ。特に、NPO愛知ネットにとっては東海地震というリスクを抱えた地域の防災活動なだけに、そのサーバーをいかにそのエリアに置かないかというのが最大の課題だった。チロロネットにとっては、ベンチャーであるために一級のiDCをリスクの低い岡山県他に持っているにもかかわらず、そのメリットを認知させきれていないという悩みがあった。相互に連携することで、両方の問題を解決し、更なる両者の本業へメリットを生み出している。また、北海道の岩見沢に本社を持つネイチャーテクノロジー社は、同社の製品を各地のNPOの活動に合わせ、提供していくことで販路開拓や認知向上、製品開発に役立てている。こうした事例を探すと、まだ目立たないものの枚挙にいとまが無い。 いままでは、企業vsNPOという図式で、どっちらかが、ある種の「負けを認めて」手を差し伸べてはじめて成立する協業や、単独活動が中心だったが、これからは、小さな企業と地域のNPOが得意分野を相互に持ちよって、どんどん手を携え、Win-Winの関係を構築していく時代に明らかになってきている。変なイデオロギー的な対立を語る時代ではないのだ。 今回のGEL-Design社とままのぽっけの提携による活動が、北海道全体におけるNPO-ベンチャー協業の一つのモデルになり、北海道経済を押し上げる原動力になることを期待している。
舟橋正浩
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