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Last UP Date:2014-06-29
財政破綻は自治を見直す良い契機だ/2007-01-15
 夕張市といえば、昨今は破綻自治体の代表格として全国のメディアを賑わしている。

 最近のトピックスとしては自治体職員(幹部)の大量退職がクローズアップされており、自治体運営が立ち行かなくなるのではないかという議論も多い。
 たしかに、財政が破綻した時機に、トップマネジメントの面々が退職金欲しさから早期退職を選択しているのであれば、道義上問題がある。しかし、自治体の機能不全を心配し、短絡的に「道や国に支援を」という意見には、幾ばくかの疑問を呈示せざるを得ない。

 実際に財政再建団体の歴史をひもといてみよう。
 1955年に地方財政再建促進特別措置法が施行されたが、その当時、全国に5000弱の市町村しかなかったうち、300ほどの自治体が財政再建団体指定の洗礼を受けている。言い方は悪いが、戦後史において財政再建団体になるということはさして珍しくもない事例なのだ。
 また、意外と知られていないが、財政再建団体指定を経て、いま現在、財政力指数(自治体財政の黒字度。市町村平均はおよそ0.4)上位をひた走り、地方交付税不交付団体(いわゆる黒字自治体。財政力指数1.0の自治体が目安)となっている自治体も少なくない。

 では今回、財政再建団体指定を受けた夕張市のような事例の場合は、そうした自治体がどのようにしてそこまでの財政力を持つに至ったかを、再度学べばよいだけのことである。それはとてつもなく簡単なことだ。じつは、市役所を働かせなければよいだけなのである。
 それを数値で示すものとして、人口1人当たりの歳出額が挙げられる。地方交付税交付金不交付団体から財政再建団体経験自治体をピックアップし、その決算を人口1人当たりで割り返すと、およそ、人口1人につき年間40万円程度だけ市役所が働いているということがわかる。
 ところが、夕張市はその3倍強に相当する135万円もの予算を使っている。雪国のハンディキャップがあるにせよ、この予算額はあまりにも大きい。

 実際に、1960〜70年代に財政再建団体指定を経験した自治体の住民に取材をしていると、
「市役所は何にもしないから自分たちでやる」
 といい、自治の空気が育っていることが実感される。やりたくてもやれない、という破綻後の状況において、条例を最小限に解釈し、業務を最小限に限定するというスタンスが身に着いており、市役所のやるべきことと、住民が住民自治でやるべきことがしっかりと再構築・再分配されているのだ。
 日本の多くの自治体では、条例を拡大解釈し、住民の瑣末な意向にまで市役所が出動し、作業するという例よく見かける。また、それが良かれという風潮も少なくない。酷い自治体に至っては、財政危機に対して、指定管理者制度で施設運営を住民に任せようとした途端、「市役所は無責任だ」という非難まで出てくるという始末である。
 これではいわば、住民が自治を放棄し、自治体職員という“特別な人たち”に「税金を払っているんだから何でもやれ」というスタンスと、自治体職員の「権限があるんだから何でもやるんだ」という思い上がりの連鎖である。この連鎖のしっぺ返しが、破綻という結末を生んでいるに過ぎない。

 こう考えると、夕張市は素晴らしいチャンスを得たといえる。市役所の職員が半分になる今、市役所の業務は物理的に半分しか出来ないはずである。
 地域住民が自分たちの手で選択と集中をしっかり行い、どの業務は自分たち地域住民が行い、どの業務を市役所という特殊な組織に任せるのかを明確に定めていけばよいのである。真の意味での「自治の再構築」を行えばよいのだ。
 夕張市では、医療分野も観光産業も、地域住民がしっかりと立ち上がり、NPO等を設立している。十分ではないにせよ市役所がかつて果たしてきた業務の受け皿を準備し、着実に歩みだしている。重要なのは、国や道による、つまらぬ過剰支援・介入ではない。このような住民自治が機能するようそっと見守り、万が一、国民として保障されうる生命・財産・権利が脅かされるときに初めて、人道的に手を差し伸べる、若しくは新たな制度設計をすることだけなのだ。

 夕張市の破綻がもたらした教訓は、地方財政のあり方をはじめ少なくない。
 そのため、外野である国や道、またマスコミからも過剰に注視され、干渉されがちになる。しかし、夕張市そのものは、夕張地域の住民の自治の力でこそ立ち直るべきなのである。そして言い換えれば、立ち直ってこその地方自治でもある。
 夕張市民はその方向に向かって着実に歩みだしている。本紙はこの歩みに過剰に介入するのではなく、着実に見守り、応援していきたい。

舟橋正浩
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