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Last UP Date:2014-06-29
取材ノートから・観光とデザインを北海道の視点から考える。/2012-01-24
 北海道中小企業家同友会が主宰する産学官連携研究会、HoPEという組織がある。北海道大学の荒磯恒久教授(現・産学連携本部副本部長)と札幌市内の中小企業が中心となり、2001年から活動を続けている団体だ。
 2012年の年頭を飾る1月例会は、移動例会として北海道第二の都市、旭川市で開催された。タイトルは『旭川の観光とデザイン』と銘打たれ、4カ所の企業見学と公演を含む内容の濃いものとなった。
 今回の記事は久しぶりの更新でもあり、雑記的要素もふんだんにあるため、企業見学の詳細には深く立ち入らない。ただ、見学した場所を列挙しておくとすれば、駅前倉庫群をアート&飲食スペースへと再開発した「蔵囲夢」、木工家具のマチ旭川で小物を製造する数少ない企業のひとつ、(株)ササキ工芸と、その展示スペースとなっている雄北(株)の「クラフト館」、そして旭川家具の代名詞のひとつとなっている(株)カンディハウスである。
 どれもが旭川の良い面を象徴し、北海道を象徴するシンボルを内包している。そして、その後行われた公演こそが、今回、最も考えさせられた部分であった。
 公演の講師は、旭川観光を行政としてプロモーションする立場の旭川市経済観光課、平島淳嗣主査だ。
 平島氏は言う。
「旭川観光のネックは、通過型観光になっているところです。旭川は動物園人気が一時沸騰しましたが、その際に来館頂いた方に十分な満足を提供しきれなかったためか、現在は人気が低落傾向です。周辺の層雲峡(上川町)やラベンダー(中富良野町)などといった、目玉的な魅力に欠けます。また、冬季と夏季の差が激しく、冬場に落ち込む観光需要をどうやって魅力的なものに仕上げていくかがこれからの課題と思っています」
 氏は続けて、特定の施設や景観に依存した従来の観光資源開発の在り方だけを追わず、季節の変化や風物といった“日常的に旭川にあるもの”に、如何にして着目し、それを訴求していくかに意を注いでいると語った。
「例えば、春に咲くサクラや秋の紅葉などは、旭川~大雪一帯の場合、約1カ月に渡って見ることができます。意外と知られていないのですが、これは日本国内で最も長期間にわたって見ることができるということなのです」

 瞬間的な光景だけに限って言っても、旭岳のように高山植物帯にまで直接ロープウェーで乗り入れが可能な場所は国内にもそう多くない。また、気温が低く川の多い旭川では、寒冷期の川霧「気嵐(けあらし)」、水滴による樹木の着氷現象「樹氷」、大気中の水分凍結による「ダイヤモンドダスト」などは日常茶飯事だが、これらが観光客に対してアピールされる機会がほとんどないという。
 公演会では、議論がさほど深まったワケではないが、これらをどう訴えていくかについて、平島氏は“ケの観光”という語を使った。非日常に味わうための非日常たる“ハレ”ではなく、当地での日常にこそ、旅行者の非日常があると解釈したのだが、果たしてそれは正しかったのかどうか。
 旭川以外の地に住む者として、旭川に抱く印象は、“木の街”“北の街”という印象が最も強いように思う。旭川市民にとって、その木は生活に溶け込んでいるのだろうか。この寒気は、いま街を歩く観光客にも市民と同じ感覚で迫っているだろうか。
 そして、観光客に口にする食べ物は、日々自らが口にするものなのだろうか。 その一致点が旭川ラーメン以外にないというのなら、これほど寂しいことはない。
 これは、北海道観光全体にも成立する感想である。我々北海道の道民が日常食べるもので観光客をもてなすべきである。以前から悪友の間では語り草だったが、ここに敢えて記しておきたい。
 食には嗜好があるから全ての人に、とは言わない。ホテルの朝食には、炊きたての暖かい白飯にバタを一欠け入れてやってはくれまいか。観光客として来られた方は、そこに醤油を一差しして、頬張って見てほしい。
 子供の頃、これをやって両親に怒られた、という記憶を持つ方も多いだろう。はしたない、と考える御仁も多いだろうとは思うが、思い出してほしい、北海道にも北海道なりの日常はあるのだ。
 このような目立たない紙面に主張しても、さほど意味があるとは思えない。しかし、北海道が観光立国たろうとするのであれば、少なくとも頭の片隅に留めておいて欲しい論点のひとつだ。

(株)ササキ工芸http://sasaki-kogei.com/

雄北(株)「クラフト館」http://craftkan.com/

(株)カンディハウスhttp://www.condehouse.co.jp/

写真:
拝 映輔
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