Interview・滝澤進氏・北海道国際航空(株)代表取締役社長/2004-06-12 |
創業以来初の黒字達成、再生計画達成に弾み 新機種導入で、中長期展望にも視野 ****** 民事再生法適用を申請し、経営再建に取り組んでいる北海道国際航空(エア・ドゥ)の04年3月期決算が発表された。売上高約185億4400万円(前期比63.2%増)、経常利益14億7600万円(黒字転換)と、同社の創業以来初、また新規参入航空会社としても初の通期黒字化を達成。再建を託されて社長に就任した滝澤進社長の胸中を聞いた。 ****** ――創業以来初の通期経常黒字を達成しましたね。 滝澤 就任当初から財政計画は、北海道の翼としての理念を堅持し、道民にも支持されながら再生への基盤を固めるという要請によく応えており、極めてよく出来た計画になっていました。これは間違いなく黒字化するだろうと思ってやって来ましたが、これだけの数字を計上するとは予想していなかった。 ――業績好調の要因は。 滝澤 私なりにまとめると、ほぼ3つのポイントになると思います。 第1に再生計画の機軸でもある全日空(ANA)との業務提携が功を奏し、経営基盤が強化されたこと。第2に「便利になって、その上安い」と謳った当社の航空サービスに対して、お客様の理解と支持が高まりを見せていること。第3に昨年7月18日の旭川線就航によって3機体制となり、スケールメリットが得られたこと。また、これらの要因を具体化する中で、社員が一致団結し、再生に向けて熱心に取り組んだことも挙げられます。 ――旭川線も搭乗率60%を超えました。 滝澤 旭川線就航のときにも言いましたが、地域の新規参入航空会社、しかも民事再生中の会社が新規路線を開拓するのは、大変なことだと覚悟しておりました。大手航空会社でさえ数十年にわたって作り上げてきた路線です。1年や2年で目標として期待する利用率に押し上げるのは容易ではありません。 そういう意味でも地元の要請や資本参加、その他着陸料減免措置などさまざまな支援を頂き、“地元との共同事業”として取り組んで、はじめて地方路線開設の路が開けたわけです。 旭川線は間もなく就航1周年を迎えます。運賃その他を含め、旭川線に相応しいキメ細かな設定もつくり、ここに来てやっと、旭川線のサービスにも認知や理解が得られてきたところです。これからも首都圏における旭川地域の積極的なキャンペーンなど、いまある信頼関係を少しずつでも発展させていかなければならないと思っています。 しかし、当社旭川線の就航に伴い、旭川空港の利用者数は対前年比で2%ほど上昇しています。わずかながらでも着実な実績はあると思います。これを励みにもっと努力していきたいですね。 ――3号機は05年にB-767からB-737に更新されるようですが、これは新規路線展開などとも関係してくるのですか。 滝澤 コードシェアを前提にすれば、年間利用者数で1000万人を超す新千歳線はB-767でなければやって行けないでしょう。一方で、旭川線用に投入した3号機は05年6月にリース期限を迎えます。同時に、当社としては“北海道の翼”として道内各地と首都圏とを空路で結ぶという大きなテーマがあります。 後継機を検討したときに、今後の需要にそった適切な機材が必要になります。年間1000万人超の大規模幹線と、年間100万人前後の地方線を同じ機体で運用すると、将来の経営に無理がかかります。今後の新規路線開設については尚更です。B-737にすれば、地方の各空港にも機動的に路線が展開できる。もちろん機数も順調に増やしていくことができた場合のことですが。 ――新規路線はいつ頃、どのような形の展開ですか。 滝澤 路線の候補がないわけではないが、現在は白紙の状態ですね。 羽田空港の発着枠(スロット)がどうなるかが最大の問題。羽田空港の利用のあり方に関する懇談会、通称スロット懇談会という会合があり、学識者とオブザーバー参加の航空関係者で討議しているが、大手は現状でギリギリ限界であり、スロットを返上してまで新規航空に回す余裕はないと主張している。一方、私ども新規航空会社は現状のスロットでは不十分。スケールメリットを得るためにもスロット配分が必要と主張しており、鋭く対立しているところです。 私としては、最低でも20枠(10枠増)から、出来ることなら30枠(20枠増)をとお願いしているところだ。結論はどうなるかわかならいが、今夏までには結論が出る見込みで、来年2月頃に再配分される見込みです。 07年に羽田空港の再拡張が終了すればスロットも4割増となるが、それまでをどう凌ぐかだけでも、航空業界は大変なんです。 また、当社としても苦慮している点ですが、B-737を導入する後継3号機以降の技術者をいかに確保し、整備体制を構築するかという問題がある。 今年度の事業費の中で、新規機材の導入費用を計上しているが、資金をかければ出来るというわけでもない。枠だけあっても飛行機がなければ飛ばないのだから、こちらの整備運用体制構築も急務。どちらも良いタイミングで決まってくれればと祈っています。 ――機数が増えればスケールメリットが確保出来ますね。 滝澤 せめて7機程度は保有しないとスケールメリットは出てこないんです。 航空機リース料の減免やANAとの包括業務提携などから、01年度を基準として現在では年間約30億円のコストダウン効果が発生している。しかしローコストキャリアとしては、まだ不十分。どれだけ安いサービスを提供できるかは、どれだけ安く資材を調達できるかにかかるわけですから。 03年下期からは、経営方針を機軸に各部門でアクションプランを作成させ、間断ないコスト構造の見直しを図っている。また、当社の財産である安全性についても、安全推進委員会で現場の処理に対して毎月議論を戦わせています。 ――株主等への還元は。 滝澤 今期の利益は再生計画中でもあり、内部留保に回さざるを得ない。まず再生計画の達成を着実に図り、利用者にネットワークの拡充で利便性を図ることができるようになりたい。 再生が実現した暁には、資金調達や配当など、株主との関係もいろいろ考えられるようになるのだが、何しろ航空会社は経営基盤が脆弱。為替動向、原油価格、機材費や整備費など、一旦何かが起これば億単位の資金が動く世界に囲まれている。もちろん需要や経済状況の推移にも目が離せない。しばらくは経営強化に回せるようお願いしたいですね。 リース機材である以上、期限が到来して返還するときにも整備が必要で、しかも多額なんです。これを平準化するため、今回発表した決算では引当金を計上したが、現状に安閑としてはいられないという認識は常にもっています。コスト削減を徹底しつつ、突発事態をどう回避し、あるいは対応するか。 気苦労は絶えませんが、“飛び続ける”ということはそういうことだと思っていますよ。 ****** 再生計画の最終年度は1年前倒しされ、今年が最終年度。原油の価格情勢は上昇基調でもあり、好調とは言え予断は許されない。 6月25日には札幌市内のホテルで株主総会が行われる。まずは確実に再生計画の達成を期したい。 ****** たきざわ・すすむ 北海道国際航空(株)代表取締役社長 1944年9月18日、長野県生。69年東大教養学部卒業後、運輸省(現・国土交通省)入省。内閣外政審議官、航空局管制保安部長、東京航空局長を経て97年退官し、日本観光協会理事長へ。03年1月より現職。
写真: 拝 映輔
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