発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・関口逸馬氏・NPO北海道産業技術支援協会(HITECS)代表理事/2004-06-19
中小企業が気軽に持てる
「研究所」を実現し技術支援
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 2002年7月に設立したNPO法人、北海道産業技術支援協会(HITECS)。メンバーは北海道工業技術研究所(現・産業技術総合研究所北海道センター)をはじめ、道立各研究機関のOBたちだ。
 定年退職した者であっても、高度な知識と技術を持っていることに変わりはない。さらに長年の職務から経験も豊富。彼らが目指したのは、道内の中小企業経営者が抱える“工業技術”の壁を破ることだ。
 中小企業から調査・研究などを受託し、助言や支援を行い、さらには自ら実験も実施する。もちろん研究開発予算については公的資金(助成メニュー)獲得までの指南も行うという。
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 ――設立の経緯をお聞かせ下さい。
 関口 私は1962年に入所した北工研のOBですが、じつは1960年に北工研が新設された関係で1960年~1970年までに入所した研究スタッフが非常に多いんです。
 北工研は60歳が定年ですから、すでにその多くが退職していますが、この世代の研究者は退職してしまうと社会との繋がりを断たれることから、もっと生きがいのようなものを作らなければ、と考えたのが最初です。
 北工研の在職中からどうするかいろいろ考えて来ましたが、適当なアイデアはありませんでした。そんな折に阪神・淡路大震災が勃発し、そのTV報道でボランティア活動をする人たちが大勢活躍するのをキッカケにして政府が非営利活動法人(NPO)の法制化に取り組みました。それでこのNPOに注目したわけです。
 幸い私たちは研究職だったため、長年の勉強で知識は豊富にある。しかし反面、元々サラリーマンでしたから金やモノは持っていない。
 でも、このまま退職して知識や経験が消滅してしまうのは勿体ないですよね。それで、社会的責任は一定の役割を果たしつつ、地域の産業技術に貢献することで私たちの“生きがい”を見つけようと言うことになったんです。いまでは研究スタッフも17人になり、カバーできる分野もかなり増えました。
 ――仕事は順調ですか。
 関口 仕事になってきたのは今年からですね(笑)。今年4月に大通に産学官連携のサテライト・オフィス(HiNT)が開業してから、技術面での支援をNPOスタッフが行っています。少しずつ人脈も広がっていますし、中には新潟から私どもの話を聞きに来てくれた方もいますよ。
 ――新潟からですか。
 関口 私は北工研時代、主に籾殻の利活用を研究していたのですが、その成果を聞きたいと。国立研究所の研究は世界レベルで進められていますが、その成果が実用化段階に到達するには相当のタイムラグがあります。そこにOBで組織するHITECSが役に立つ大きなポイントがあることを確認でき、非常に嬉しかったですね。
 ほかにも実証試験を伴う受託研究を2件ほどやっております。
 ――どんな実験をされたんですか。
 関口 詳しくは言えないんですが、1件は、小樽市内のあるガソリンスタンドで、敷地内に石油汚染があって除染処理に困っていたんです。現地に会員を2人派遣し、実証実験を行って処理方法を確定、解決の方法を提案しました。もう1件は道北の産業廃棄物処理業者ですが、地域の環境基準が厳しくなって、廃タイヤの焼却処理方法の見直しが必要となったんです。こちらも処理方法や必要な設備を導き出し、新たな処理法を監督官庁に提案したところ、無事通りました。他の企業も様々な提案をしたようですが、結果的に私どもの提案だけが通ったと聞いており、その業者の方には喜んで頂きました。
 ――すごい実績ですね。
 関口 実験まで行うという組織はまずありませんよね。まず様々な角度から解決法を考えてみて、実験によってある程度の結果を得る。その後商業ベースでやるかどうかは、別の次元の話ですから、経営者の方にお任せしています。
 中小企業が抱えている問題は、この前段に当たる部分にトライできる環境がないこと。ここを私どもHITECSが引き受けようと思っているんです。ところが私たちも、なかなか実験設備を買い揃えるのが大変でしてね。
 ――どうクリアされているんですか。
 関口 やはり、技術相談などを通じて、新事業を研究開発しようとしている意欲ある企業を探すしかありません。また、私たちが個人的に持っている研究テーマも企業に提案するなどして、地道ながらでも着実に歩みを進めて充実させたいですね。
 今後は講演なども含めて、もう少し積極的に活動していければと思っています。
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 関口氏の現役時代は籾殻を幅広く研究、そこからファインセラミックス「サイオック」(SiOC)を生成するなどして特許も取得している。他のスタッフも同様に、化学工業、バイオテクノロジー、材料工学、環境工学と幅広い専門分野を持つ。いまなお会員・スタッフを募集中だ。設立2年余経つにもかかわらず“知る人ぞ知る存在”だと言ってよいだろう。
 今後の活躍が、北海道の産業のために期待される。
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せきぐち いつま
1939年旭川市生。室蘭工大鉱山工学科卒業後、通産省工業技術院北海道工業開発試験所(当時)に入所。84年工博(北大)取得。同所応用化学部長を経て、94年プロパー初の所長。99年に退任後、北電総研顧問などを務める。02年NPO法人北海道産業技術支援協会(HITECS)設立、現職。資源・素材学会理事、同北海道支部長、北海道科学技術審議会委員、通産省産業技術審議会エネルギー・環境技術開発部会専門分科会委員などを歴任。専門は資源分野。非金属資源、寒冷地バイオ資源の高度利用技術などで特許12件取得。
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●NPO法人北海道産業技術支援協会(HITECS)
 札幌市豊平区月寒東2-3-11-14
 Tel.011-855-4123
 FAX.011-855-4123
 http://www.h3.dion.ne.jp/~hitecs/
写真:関口逸馬HITECS代表理事
拝 映輔
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