決算に見る道内信金・信組の現状(下)/2004-07-14 |
地域支援に全力注ぐ“信組”
次に信組を見てみよう。預貸の部では道内8信組で5602億29百万円と、前期比1.0%増。貸出量は全体で3764億51百万円と前期比0.2%と微増。預貸率は67.2%とわずかに0.5ポイントほど減らしているものの、中小零細企業向け金融機関としての矜持を示した形となった。 収益の部では、業務純益が2信組で減収となったものの、全体では0.2%の微増。経常利益は室蘭商工信組、十勝信組の2信組で黒字転換、函館商工信組が赤字となった。不良債権総額が全8信組で圧縮が進み、自己資本比率も全信組で6%を超えた。 信組の場合、本来持っている“機動力”を生かし、取引先各企業に綿密な“コンサルティング”を行うことで、地域経済への支援を果たそうとしている。
“体力勝負”の矛盾
気になるのは、ペイオフ全面解禁を控えての各金融機関の“安全度”。数値を見る限り、道内の信金信組に問題はない。とくに指標とされる自己資本比率は、信金で軒並み10%以上、信組全てで6%以上と、全金融機関が国内基準の4%を超えている。 道内は、製造業の層が薄く、最近の国内における景気回復局面にいまひとつ乗り切れていないのが現状だ。体力があるかどうかに関わらず、信金・信組ともに、地域の産業基盤そのものから再構築しなければならない。多少の無理が必要なのは、その意味ではどの金融機関にしてみても通感している。 その一方で、金融庁が掲げる金融検査マニュアルは、自己資本比率や不良債権処理額といった外形的基準で、一刀両断にされる危険性を孕んでいる。 つまり、リレーションシップ・バンキングによる地域経済再生への努力と、金融検査マニュアルによる“体力主義”という、矛盾した課題を突き付けられているわけだ。 道内の信金・信組には、知恵を振り絞って地域経済の構造転換に向かう推進役を果たしてもらいたい。それは何よりも個々の信金、信組のためにである。
2004年3月期道内信組決算数値(PDFファイル) ※預金量、貸出量、業務純益、経常利益、当期利益、不良債権開示総額はそれぞれ百万円単位。前期比、預貸率、自己資本比率はそれぞれ%単位。ただし、預貸率、自己資本比率の前期比は前期との引数(ポイント)。
拝 映輔
|
|
ニュース一覧
インタビュー一覧
コラム一覧
連載小説一覧
TOPに戻る
|