発行:Funahasi.Com & 北海道経済産業新聞運営委員会
Last UP Date:2014-06-29
Interview・小林等氏・(有)音の工房・IDEA43代表取締役/2004-08-15
スピーカーは“楽器”のひとつ
木や絹を素材に独自製作
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 旭川市内に、独自の木製スピーカーを製作している工房がある。筐体部分(エンクロージャー)も合板やMDFではなく直材製なら、スピーカーの振動板も木製という、磁気回路等を除きほぼ100%オリジナルのスピーカー・システムだ。製作しているのは木工デザイナーの小林等氏。1992年に(有)音の工房・IDEA43を設立し、独自のスピーカー・システムをはじめ、オリジナルオーディオラックなどを東京方面から受注し、製作している。
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 ――スピーカーに興味を持たれたキッカケは。
 小林 まだ中学生の頃、パイオニア製のスピーカーキットを組み立てたのが一番最初です。オーディオづくりといえば、アンプなどを自作するのが一般的ですが、最終的に音を出すのはスピーカーの仕事。それ以来スピーカーづくりに取りつかれまして、いままでやってきたんです。僕は楽器が弾けないこともあって、スピーカーをつくることによって自分自身が音楽に参加できるのではないか、との想いもありました。
 ――どんな仕事をされていますか。
 小林 オーディオ関連の仕事であれば、大抵のことはします。先日もオーダーメイドでプラズマディスプレー用の5.1Chサラウンドシステムのボード造りを依頼されて、組み立てたところです。
 ――木製のスピーカーづくりで気をつけているポイントは。
 小林 スピーカーは素材のスピードを上手く生かさなければ駄目なんです。木を伝わる音速は、空中よりもずっと早い。しかも木目に平行に通すと、木目に垂直に通したときの2倍ほどになります。しっかりと音を響かせながら、濁らない音をつくるには、こういった特性も頭にいれながらスピーカーづくりに取り組むんです。木の材質も音に大きな影響を与えます。やはり目が詰んでいて重い木材の方が良いように思います。クルミやカバ、ブラックウォルナットといった材料が比重も高くて強いですね。
 ――スピードですか。
 小林 スピーカー自体を強くすると全体が重くなり、重くなると微妙な音が出て来なくなるんです。しかし、弱く軽くすると音全体が濁ってくる。きめ細かくて澄んだ音を再現するには、軽くて丈夫な素材を追求することが大事になってきます。私の場合、振動板には樹木、絹、和紙を使い、それらをポピーオイルやリーンシード(亜麻仁)オイル、テレピンなどを使って固めるわけです。天然素材を活かして作っています。
 ――なぜ天然素材にこだわるんですか。
 小林 バイオリンで名器と言われるストラディバリウスは、ニスに特色があるのが音の秘密だと言われています。例えばウレタン系の塗料を使うと、早く乾くが表面にしか塗料が届かないんですね。亜麻仁やポピーの場合、乾くまで約1年と気が遠くなるような時間がかかりますが、しっかり細胞の奥にまで塗料が届き、材質を固めてくれます。ストラディバリウスに使われているのは天然素材で、長い時間が経っても変化しにくい。耐久性があるために良い音が出続ける名器となったわけです。木材は、伐採してから100年後に最大の強度が出てくるんですよ。
 ――スピーカーシステムは外側から見ると、船型をしていますね。
 小林 楽器のリュートの形状を模しています。エンクロージャにも工夫を凝らしているんです。強い材料を使って歪まないようにするのは当然ですが、箱型にすると、どうしても特定の周波数で共振してしまう。それを避けるために、内部に平行面をつくらない設計が必要で、そのためこのような形になったんです。
 ――面白いですね。
 小林 生命が宿っていたものでスピーカーをつくることにはこだわっています。木も紙も、絹も全て生き物が作った天然の素材。材質の特性が素晴らしいこともありますが、長い年月を経て良くなっていくスピーカーを作りたい。プラスチックを多用する工業製品としてのスピーカーでは、こうはいきません。
 なんと言ってもスピーカーは楽器のひとつ。ストラディバリウスのように、時間を経て味わいを増すようなスピーカー・システムを目指したいですね。
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 IDEA43のスピーカー・システムで聴くと、名器と呼ばれるバイオリンの数々の個性までが聴き取れる。小林氏によれば、このスピーカーたちが最も得意とする音域は、人間の声の音域であるという。こだわりの職人がつくったこだわりのスピーカー。量産はできないが、1本ずつ、自ら音を確かめ進化させながら作られるスピーカーだ。宣伝をせずとも噂を聞き付け、オーディオマニアから受注があるのもうなづける。オリジナルスピーカー・システムは1本約50万円、セットで約100万円。音のわかる人間には、それだけの価値がある。
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こばやし ひとし
 1949年、旭川市生まれ。71年東京造形大学卒業後、カミカワ・グループに木工デザイナーとして入社。数々の木製家具デザインを手掛けた後、1992年に独立。(有)音の工房・IDEA43を設立し、代表取締役に就任。現在に至る。
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●音の工房・IDEA43
 旭川市緑が丘1条3丁目3番2号
 Tel.0166-65-0184
 Fax.0166-65-0184
写真:上:小林等氏 写真:中:木材を振動板に使ったスピーカー 写真:下:船型の筐体を持つオリジナル・スピーカー・システム
拝 映輔
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