北海道こんぶフォーラム in 札幌
2009 年3 月28 日(土)、札幌市中央区北4 条西3 丁目にある佐藤水産文化ホールにて、特定非営利活動法人北海道こんぶ研究会が主催する、北海道こんぶフォーラムin 札幌が開催された。当フォーラムは、昨2008 年3 月に第1 回が開催され、2009 年1 月には、森町で初の地方開催が実現した。今回は通算3 回目の開催である。
当日は晴天に恵まれ、新聞報道などで告知された午後1 時より大幅に早く来場者が会場に訪れるなど、幸先の良いスタートをきることができた。開催時刻は新聞報道と違い、当会で予定したとおり午後1 時30 分よりの開始となった。開会時刻までに来場者92 人が参集したが、開会に先立って、まず開会時刻の錯誤に関するお詫びが、司会の吉田省子理事より述べられた。
はじめは、「おべんきょうタイム」と銘打って、講演が行われた。最初は、札幌医科大学附属臨海医学研究所(利尻)の副所長を務める高橋延昭准教授により、「こんぶのうま味にまつわる話」と銘打った講演となった。高橋氏は、利尻島におけるこんぶ資源のありようとして、1 年生コンブの生残率が約1%と非常に低いことに着目し、冬季の荒天や養殖時の間引き作業等によって失われる1 年生コンブの食用資源化を模索した経験をベースに講演をいただいた。また、商業化にあたっては、京都の有名料亭に現品を持ち込んで料理を試作してもらうなどの本格的対応をしており、今後の研究予定として、コンブの商品価値を低からしめる「ヒゲ」(ヒドラの仲間)の生態を明らかにしたいとして結んだ。
二番目の演者は、福井県敦賀市にある御昆布司奥井海生堂の四代目主人である奥井隆代表取締役社長であり、題目は「昆布−そのテロワール−」として、各地のこんぶが持つうま味の質の違いからはじめ、年代間の差、採集される土地(浜)での差、さらに熟成を深めると味も深まるという特性を紹介し、ワインと同等に、こんぶにもそのテロワールがあるということを講演して頂いた。ほかに、現代に至って新たにわかったダシの入れ方や、コンブの保管について光や熱、煙を特に遠ざけるべきであることなど、さまざまな知恵が語られた。
最後の講演は、生活協同組合コープさっぽろの理事を務める井上久子氏による「食卓にこんぶをのせよう!」であり、家庭料理として簡単に保存食が作れるこんぶの調理法の数々が紹介され、北海道が主産地でありながら、全国最低水準とも言われる消費量の低迷を続けることに危機感を抱き、ともに打開を目指そうとする意見で締めくくった。
続いて特別報告タイムと題して、当会が支援し、せたな町大成区で産学官連携プロジェクトとして活動しているホソメコンブ陸上養殖事業について、当会理事長でもあり、北海道大学北方生物圏フィールド科学研究センター助教(室蘭臨海実験所)の四ツ倉典滋氏による計画の意義や今後の見通しにおける解説、また、事業主体である株式会社三和建設の大野一代表取締役社長による養殖施設の概要紹介などが行われた。
特別報告タイムに引き続き、「もぐもぐタイム」と題して、実際に当該養殖施設で生産されたホソメコンブを持ち込み、「おさしみこんぶ」として、生とゆで上げの二種類の形式で試食を行い、同時に、リシリコンブ粉末を利用し、小麦粉に練りこんだ「荒波うどん」の試食も行った。
最後に、おしゃべりタイムと題してパネルディスカッションおよび会場との質疑応答が行われ、北海道の産業としてのこんぶ漁業のありかたを考える発言や、奥井海生堂に札幌出店を要望する声など、多彩な発言が相次いだ。その中でも、こんぶの名称として「こぶ」が正しいか、「こんぶ」が正しいかなどの質問には、奥井氏から「すなわち、各地にそれぞれの呼び名ができるほどの歴史を持つ食品だということ。およそ1000 年の歴史を持っているこんぶを、これからも大事にしていくためには今、いろいろなことを考えるべき」との回答を得たり、「こんぶが採れなくなっているというのは本当か」といった質問には、会場にいた当会会員の有限会社マリン綜合、運上賢逸専務取締役から「流氷接岸が減っているのは深刻。当社も雑海藻駆除の船を運用しているが、これでは流氷が行う仕事の三分の一しかできない」、あるいは高橋氏から「北海道は寒くなければならない。」という意見を頂くなど、活発な議論がなされた。
会場後ろには、演者の皆さんから展示用に提供された各種のパネルを掛けられ、来場者は興味深げに見学していた。
当日入場者は、札幌市民を中心に北海道民92 人となった。また、本事業は北海道中小企業家同友会産学官連携推進事業の補助およびろうきん活動助成の補助、特定非営利活動法人産学連携学会の協賛を得て行われた。関係各位には改めて感謝の意を表したい。
理事 川下浩一
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