第4回 北海道こんぶフォーラム ― 2009 in 札幌
〜こんぶの歴史と文化を考える集い〜
2009 年9 月12 日(土)、札幌市中央区北4 条西3 丁目にある佐藤水産文化ホールにて、今回で通算4回目となる「北海道こんぶフォーラム」が開催された。開催当日は天候にも恵まれ、絶好の日和となった。
まずはじめに、当会の四ッ倉典滋理事長より挨拶が述べられ、ついで当会の秋野秀樹事務局長より、「北海道こんぶ研究会の紹介〜フォーラムの開催にあたって」と題して、会の活動内容や活動方針等が紹介された。
第一部は「おべんきょうタイム:こんぶを知ろう」と題して、北海道開拓記念館の会田理人学芸員、北海道区水産研究所の長谷川由雄元所長の両名を講師に招き、講演を頂いた。
最初に講演を行った会田氏は、「こんぶ採取と利用の文化史」と題して、現代の北海道におけるこんぶ生産の概況やこんぶ生産の実態、雑海藻との生存競争や他の有用海藻、水生動物との相互作用といった問題点、また、古くから救荒食として利用されてきた歴史などを、利尻で行ったこんぶ漁の取材や雑海藻駆除の実態レポート、投石事業といった歴史的取組み、利尻のテングサ漁にまつわる歴史文書の紹介等を交えて詳しく解説して頂いた。また、消費についても福井県や富山県、沖縄県や福島県などに長い歴史を経て利用の歴史を刻んでいった歩みの深さを紹介して頂いた。
次いで、長谷川由雄氏が「こんぶ養殖の技術的発展」と題して講演し、昭和30年代からはじまったこんぶ増殖の試みの歴史について、町や漁協、大学等と力を出し合って養殖法を編み上げていった当時の苦労話をお聞かせ頂いた。南茅部町の川汲で流水を用いた水温制御法などの工夫や、一年間で二年こんぶに匹敵する藻体を生産する促成栽培についても、むしろ発表当初は国内からより海外からの反響の方が大きかったというエピソードも交えて新たな技術の導入の難しさを語り、現在に至ると、当時の指導とはずれが生じ、養殖ロープから間引きをせずに可能な限り生産量を増やすといった事例が見受けられることなどから、技術が当初目指していた志が揺らいでいることに警鐘を鳴らした。また、質の劣化を懸念するが故に、天然の母藻に胞子を依存していること等、養殖法に対する細かな疑問にも応える講演となった。
長谷川氏の講演が終了した後、「ひとやすみ」と題して休憩時間を設け、パネル展示や各地で生産されたこんぶの実物等を展示して来場者に見学してもらった。会場脇のコーナーには、お刺身こんぶ無料試食コーナーを設け、せたな町で試験生産している陸上養殖ホソメコンブのしゃぶしゃぶを来場者に試食して頂き、好評を得た。また、展示コーナーには日高こんぶの端切れこんぶが無料試供品として提供され、来場者からの人気を博した。
最後に「おなはしタイム:みんなでかんがえよう」と題して、四ッ倉理事長、会田講師、長谷川講師と秋野事務局長が壇上に上がり、会場との質疑応答を行った。会場からは「こんぶにグルタミン酸が多いのはどうしてか」「海帯という別名もあるらしいが、昆布はいつ頃から昆布と呼ばれているのか」といった質問があげられ、それぞれに回答していった。
今回のフォーラムには40名の来場者が訪れ、こんぶの歴史や文化について学ぶことができた。また、今回のフォーラムは、北海道産学官連携促進補助事業の支援対象事業として開催されたことを報告する。
理事 川下浩一
|